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高齢者の脳トレにおすすめ 音読が効果を発揮! 口腔ケアにも有効
脳の機能は使っていないと衰えていくため、適度な刺激を与えて働きをよくすることが大切です。そのためのさまざまな脳トレ法が考案されていますが、シンプルな「音読」が脳によい刺激を与え、認知症の予防のみならず口腔機能の低下対策にもなることがわかっています。脳トレとしての音読の脳への効果と、高齢者施設のレクリエーションなどでの活用方法を説明します。
シンプルな音読が脳トレになる理由
音読とは、声を出して文章を読むことです。アクティビティなどでは「朗読」と混同されることがありますが、朗読は文章の読解力や感情を込めて読む表現力を必要とする表現活動なのに対し、音読は読解力や表現力も必要としない、ただ声に出して読むだけの活動です。このシンプルな音読が脳トレとして認知症予防などの効果があるとされています。
脳の働きは加齢によって次第に低下し、使わないでいるとよけいに認知症のリスクが高まります。そこで、知的な刺激を与えて脳を活性化することが認知症予防になります。読書は認知症予防に有効とされていましたが、声を出さずに読む「黙読」よりも、声に出して読む「音読」の方が脳全体を活性化させることがわかりました。脳の専門家による研究では、音読をしているときと黙読のときを比較すると、音読の方が脳全体で血流量がより多くなり、より活性化するとのことです。
単に「文字を読む」ことに加え、「声に出す」ことが音読の大きな特長ですが、その声を耳から聞いて、さらに脳で処理するなど、黙読と比較するとより複雑な処理を脳が行なっていることになります。この一連の流れが脳全体を活性化させるのです。また、音読では特に前頭前野が活発になるといわれています。前頭前野は脳の前側にあり、学習や記憶、思考、感情、コミュニケーションなどをコントロールする部分です。このように、音読は脳に効率よく知的な刺激を与えてくれることから、脳トレとしても有効といえます。
音読で口とノドも鍛えられる
音読は口腔ケアやノドを鍛えるトレーニングにもなります。口やノドの機能は声を出すことと大きく関係しているからです。声を出して話す機会の多い人はノドの老化が遅い傾向がある一方で、声に出して話す機会が少なくなると、食物をかむ、飲み込む、滑舌といった機能が衰えていきます。こうした口やノドの機能の低下は、高齢者の死因の多くを占める誤嚥性肺炎の危険性を招きます。
特に高齢者にとって口やノドの機能低下を防ぐためには、日ごろの生活の中で声を出す機会を増やすことが大事です。しかしながら、昨今はコロナ禍の外出自粛や面会制限などで人と会って話す機会が減り、滑舌が悪くなったと感じている高齢者も多いようです。このような状況下で、あらためて口やノドを鍛えることの重要性が指摘されています。
そこで、おすすめの方法が音読です。口やノドを鍛えるためのトレーニングは各種ありますが、飽きてしまい長続きしないというのでは意味がありません。その点、音読は自分の興味のあるテキストや好きな本を使えばよく、1日数分程度行えばよいとされています。手軽にできて、飽きずに続けやすいトレーニングといえるでしょう。
音読をするときには舌やくちびるをよく動かすので、継続して行うようにすればノドや口腔機能の改善、誤嚥性肺炎の予防効果が期待できます。また、口腔機能が改善されれば、食事も楽しめるようになり、健康にもよく、生活の質の向上にもつながると考えられます。
一人でもグループでも音読を楽しもう
音読は一人でもグループでも行えます。高齢者施設などで行う場合の進め方とポイントを紹介します。
<一人でできるレクリエーションとして>
・読むテキストは、新聞・雑誌・文庫本・絵本など、なんでもかまいません。レクリエーション用の音読シートなども販売や配信されているので、利用者が興味のあるものを選べるように複数用意しましょう。
・読む前に声に出して、早口言葉をゆっくり言う。50音を言うなど30秒程度ウォーミングアップをします。
<グループで音読会を行う場合の進め方とポイント>
・職員が進行役になり、参加希望者を募ります。参加人数は10人前後が最適。進行役は事前に一度テキストを声に出して読み、読むのにどれくらい時間がかかるか、読みづらい箇所などを確認しておきましょう。
・読むテキストは、昔話・詩・論語など、参加者が興味を持てそうなものを選びます。文字の大きな本や季節にあったものがおすすめ。2回目からは参加者のリクエストも取り入れましょう。
・会を進めるにあたって:
1)会を始める前に緊張をほぐして和やかに取り組めるよう、歌を歌う、手遊びをするなどしてウォーミングアップをします。
2)読むのがむずかしそうなテキストは、進行役が一回読んでみせます。
3)参加者みんなで読む速さや漢字の読み方などを確認します。
4)参加者全員で一斉に声を出して読みます。ペースをあわせて読み進められるよう、ページごとに進行役が「さん、はい」など声掛けをします。
5)ノドが渇いたら、参加者それぞれのペースで水分補給をしましょう。
<共通のポイント>
・背筋を伸ばして、姿勢をよくして行いましょう。
・読み間違えたり詰まったりしても、気にせず読み進めます。
・1回に読む分量は文庫本2ページ、数分程度が目安です。長い時間、声を出すとノドを傷めることがあるので、1日数分以内にしておきます。
・脳トレや口腔ケアとして行う場合は、3分程度をできるだけ毎日継続することが大切です。1分程度、時間帯を変えて1日3回行うのでもかまいません。
・口腔トレーニングとして行う場合は、表情豊かに口を大きく開けて、深く呼吸をしながらゆっくり読む。筋トレをするつもりで、といったことも意識しましょう。
楽しみながら続けられる工夫を
音読は継続して行うことで、認知症の予防や口腔機能などの低下防止の効果が期待できます。脳トレや口腔ケアとしてもぜひ取り入れたいものですが、感染対策などでグループでの活動がむずかしい場合は、自由時間などに一人でもできる活動として利用者さんにおすすめしてはいかがでしょうか。
音読の効果を得るためには、利用者さんに興味を持って楽しんでもらうことが大切です。読むテキストもそうですが、ウォーミングアップ用にも利用者さんの興味に合わせたものを準備することをおすすめします。