議論が進む2021年介護報酬改定のポイントは?

2021年は、3年に一度見なおされる介護報酬改定が示される大切な年です。第8期介護保険事業計画発表にともなう2021年4月改定に向け、国会ではヒアリングや個別の議論が行われています。コロナ禍の影響で遅れ気味ではあるものの、スケジュールは国の来年度予算決定(改定率の決定)に向けて、本格的な検討に入りました。厚生労働省からは、今後議論すべき主要テーマが明確に示されています。2021年介護報酬改定の主要テーマの骨子、概要について確認しましょう。 

2021年介護報酬改定の主要テーマとは?

次回の介護報酬改定に向けて、下記の内容が議論されています。

1       地域包括ケアシステムの推進

地域において、行政、医療、介護などが情報を共有して、生活支援や高齢者のケアを包括的に行っていくことについてより内容を充実させ、推進する

2       自立支援・重度化防止の推進

今後、劇的に増加する後期高齢者が要介護者になってしまう前に、健康年齢を延ばし、自立した生活を送れるように介護予防ケアマネジメントを推進する

3       介護人材の確保・介護現場の革新

今後、大幅に不足することが予想される介護人材を確保する、また介護現場にICTを積極導入して革新的な労働環境を構築するための道すじづくりをする

4       制度の安定性・持続可能性の確保 

保険者である市区町村による介護サービスの質や量の格差をなくす。また負担増や給付削減により、利用者の生活の維持が困難とならないよう、質の高い福祉サービスを維持、供給できるように事業者の人材や予算を確保する

急きょ提案された新テーマとは?

介護施設における新型コロナウイルス感染症の出現・流行は、利用者の生命にかかわるリスクが高くなることを意味するだけではありません。クラスター化するリスクも高いため、これまでの介護施設の運営のあり方にも大きな変化をもたらそうとしています。また、近年は風水害が多発しており、想定外の災害発生にも緊急の対策、対応が迫られています。

このような状況のもと、厚生労働省は、追加テーマとして、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)や昨今発生している大規模風水害への対応をふまえた、「感染症や災害への対応力強化」を提案しました。提案は、社会保障審議会、介護給付費分科会にて全面的な賛同を得ています。

今後のスケジュールとポイントは?

課題が山積し緊迫した状況のもと、来年4月からの改定は待ったなしです。これまでのお役所仕事からの「脱官僚」、迅速な官邸主導による国民主役の政治をめざす菅政権の新しい変革の風を、介護の世界にも吹き込んでもらえることが望ましいです。以下、今後のスケジュールとポイントです。

2020年秋ごろ 上記の内容で示されたテーマ・方向について、さらなる検討

2020年12月 基本的な考え方の整理ととりまとめ

2020年12月 国の来年度予算が決定(予算の大枠、改定率が決定)

2021年1~2月 国会における諮問や答申(介護報酬の具体的な内容の承認作業)

2021年3月 2021年介護報酬改定の詳細決定

2021年4月 発表、施行

介護最前線からの声とは?

日々、介護の最前線で運営や利用者のケアを行う事業所のスタッフにとって注目すべきポイントは、やはり「介護人材の確保・介護現場の革新」についてでしょう。

団塊の世代が後期高齢者となり、要介護者が劇的に増加するとされる2025年が着々と近づいているなか、介護現場における介護人材の質と量の確保はかなりの難題です。「介護現場へICTの積極的導入を行い、過酷な労働状態の革新をはかる」というのは理想論にも感じられ、2025年問題を乗り切る上で不安が残ります。 

医療従事者と介護従事者との圧倒的な収入格差を是正すること、また、よりきめ細かく処遇改善を行い、介護従事者のモチベーション向上を推進することも大切です。介護最前線からの提言として、声を上げていくべきではないでしょうか? 

同時に、とくに若手介護職の仕事に対する意識や技術の向上を目的とした教育施策や、働き方対策も喫緊の課題として、業界全体でとりくんでいく必要があるでしょう。

参考:

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