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高齢者施設で感染症発生!どう対応すべき?
たくさんの人が生活する高齢者施設では、感染症が発生すると周囲に広がる可能性が高くなります。実際に感染症が発生した場合、どのように対応したらよいのでしょうか。高齢者施設で感染症が発生したときの対応のしかたと、高齢者がかかりやすい感染症別に対策を紹介します。
高齢者施設で感染症が発生したときの流れと対応
高齢者施設には抵抗力が低下している高齢者が多く入居しています。そのため、ひとたび感染症が発生して、対応をまちがえると、あっという間に感染が広がってしまいます。
高齢者施設で感染症が発生したときには、次の流れで早急に対応することが大切です。
発生状況の把握と対応
感染症が発生したら、入所者と職員全員の健康状態を確認し発生状況を把握しましょう。感染症がいつ発生したのか、だれに症状があるのかなどを階やユニット、居室ごとにまとめます。医師の診断を受けた場合は、受診日と診断名、検査や治療の内容も確実に記録しておきましょう。
感染拡大の防止
感染症を最小限にとどめるためには、感染が拡大しないよう防止策をとることが大切です。職員が感染症を広めないよう、衛生管理に努めましょう。衛生的手洗いを実施し、必要に応じて使い捨てエプロンを使用します。また、嘔吐(おうと)物や排泄物などの適切な処理を徹底します。消毒する際には、感染症に応じた消毒薬を使用しましょう。
行政への報告
感染症の種類や発生状況によっては、行政への報告が必要な場合があります。感染症の発生状況をそのつど施設長に伝え、行政への報告がすみやかにできるようにしておきましょう。以下の場合は、行政への報告が必要です。
- 同一の感染症や食中毒による、またはそれらが疑われる死亡者もしくは重篤患者が1週間以内に2名以上発生した場合
- 同一の感染症や食中毒による、またはそれらが疑われる患者が10名以上、もしくは全利用者の半数以上発生した場合
- 通常の発生動向を上回る感染症などの発生が疑われ、施設長が報告を必要と認めた場合
関係機関との連携
感染を拡大させないためには、関係機関と連携して適切な対応策をとることも大切です。日ごろから、以下のような関係機関と連携体制を構築して、万が一に備えましょう。また、入居者の家族への情報提供や職員への周知も忘れてはなりません。
- 医師(嘱託医)や協力医療機関の医師
- 保健所や都道府県担当局
- インフェクションコントロールドクター(ICD)
- 感染管理認定看護師(ICN)
高齢者がかかりやすい感染症の対応策
では、実際に感染症が発生した場合、どのように対応したらよいのでしょうか。高齢者施設で発生しやすいインフルエンザウイルスとノロウイルスによる感染症を例に、対応策を見ていきましょう。
インフルエンザの場合
インフルエンザと疑わしき症状が見られた場合には、すみやかに医師の診察を受けます。インフルエンザの疑いがある、または診断がされた利用者は個室対応とし、ほかの利用者への感染を防ぎましょう。感染者が複数出て個室が足りない場合には、同じ症状の人を同室にします。
職員はサージカルマスクを着用してケアを行います。また、感染者が個室の外に出るときは、マスク着用を徹底しましょう。
職員が感染した場合には、症状が安定するまで休んでもらいましょう。施設の就業規則で休業期間を設けておくことも大切です。休業期間は、学校保健安全法のインフルエンザによる出席停止期間を目安にするとよいでしょう。
ノロウイルスの場合
ノロウイルスによる感染症が発生した場合も、インフルエンザと同様に可能なかぎり個室対応にしましょう。個室が足りない場合は、同じ症状の人を集める、もしくはベッド間をカーテンで仕切ります。
感染者の嘔吐物や排泄物に含まれるウイルスが空気中に漂うと、感染を広げる原因になります。マスクと使い捨てガウン、使い捨て手袋を着用し、ペーパータオルなどで排泄物を覆ったあと、次亜塩素酸ナトリウム液を噴霧して確実にふきとりましょう。使用した物品はすべて袋に入れ密閉して廃棄します。寝具や衣服が汚れた場合には、次亜塩素酸ナトリウム液に浸すか、85℃以上のお湯で1分間以上熱湯消毒したうえで洗濯します。
また、ノロウイルスの感染ルートを確認することも重要です。一緒に食事をした人や施設外の関係者との接触状況も確認しましょう。24時間以内に水様便や嘔吐症状の発症者が2名以上になったときには、施設全体に緊急体制をしき、職員全員が状況を把握できる環境を整えます。関係者の家族に状況を説明し、外部との面接を制限するといった対応をして、感染を広げないことが大切です。
感染症が発生したら拡大防止が大切
感染症は正しく対応しなければ、発生時に感染を広げてしまいます。感染症が発生したときには、すばやく正しい対応をして、感染拡大予防に努めましょう。
参考: