もう一度復習しておきたい、認知症のこと

認知症とは、長年にわたって形成されてきたさまざまな精神機能の能力が、衰退もしくは消失してしまい、日常的な社会生活が営めなくなるという状態で、特に高齢者に多く見られます。現在、日本で65歳以上の高齢者における有病率は8~10%と推定されており、2020年には認知症の患者数が325万人に達するといわれています(厚生労働省調べ)。

今後、介護の現場において、認知症を持つ利用者への対応力の増強が求められることはいうまでもありません。この機会に、認知症について復習しておきましょう。

 

認知症とは?

「認知症=アルツハイマー病」と思っている人がいるかもしれませんが、認知症にはいろいろな種類があります。アルツハイマー病型をはじめ、認知症の約8割を占めるという主だったタイプを下記に見ていきましょう。

  • アルツハイマー病型認知症

認知症のなかでもっとも多い種類のひとつで、女性に多いことが知られていますが、病因は不明です。しかし、脳にアミロイドβとタウというたんぱく質が蓄積して、脳内の神経細胞がダメージを受けて異常をきたし、発症する説が有力とされています。病理研究が進んでおり、病気の進行を止めるさまざまな新薬が開発提供されています。

  • レビー小体型認知症

認知症全体の約2割を占めます。神経細胞の中にあるレビー小体が異常に蓄積してしまうことで発症します。こちらは男性に多く、歩行の異常、筋肉のこわばりなどのパーキンソン病の症状をあわせもつことも多く、幻視が現れる、暴力的な性格になることがあるのも特徴的です。

  • 脳血管性認知症

脳梗塞(のうこうそく)や脳出血などによって脳血管がダメージを受け、それが原因で発症する二次性認知症です。

 

認知症になるとどうなる?

認知症の中核症状は下記のようにまとめられます。

  • 記憶障害
    新しいことを覚えられない、さっきしたことや、見聞きしたできごとが思い出せないなど、記憶の機能が著しく低下します。加齢による物忘れとは異なります。
  • 見当識障害
    現在、過去、未来などの時間の感覚がなくなり、場所や人が判別できなくなります。たとえば、自宅や何度も行っている店への行き帰り道がわからなくなったり、昼夜が逆転したりなどが起こります。
  • 判断力障害
    論理的、常識的な思考や行動ができなくなります。たとえば、着ているものがちぐはぐになったり、だらしない着こなしになったりします。
  • 実行機能障害
    段どり能力の低下を指します。わかりやすい障害の例には「料理」が挙げられす。材料を準備しても、それを調合したり手順どおりに切ったり、煮たり焼いたりができなくなります。結果、料理のレパートリーが減り、同じ料理を繰りかえしつくる傾向が見られます。

また、認知症では、妄(もう)想や幻視、徘徊(はいかい)、不潔な生活、睡眠障害、失禁、異食、暴力や大声など、日常生活においてもさまざまな周辺症状が現れます。

 

認知症の介護、プロとしてどう対応すべきか?

  1. 利用者の尊厳をしっかりと守る
    ひと昔前は「痴呆(ちほう)症」と呼ばれ、社会的にも非人間的な対応をされることもあった認知症。高齢者の認知症患者は昭和の時代に戦火をくぐり、戦後を生き延び、家庭を築き、子供を育て上げてきた人々でもあります。その経験、人格、尊厳を守り、医療、介護、行政、家族がしっかりと連携しケアしていくという姿勢が大切です。
  2. 自立支援
    介護の世界では、利用者の自立支援は基本的なテーマです。できるかぎり自分の力で身のまわりのことをやってもらうことは、利用者が認知症であっても同じです。安易な親切心や「してあげたほうが早いから」という感覚でのケアは禁物。何もかもを介護ヘルパーがやってしまうと、その人の生きがい、生きようとする意欲をも阻害してしまいます。今では、昔の記憶や経験が残る高齢者の女性に積極的に家事を手伝ってもらうことも、認知症のリハビリに効果的といわれているくらいです。
  3. すべての言動には原因がある
    認知症の人にはさまざまな拒否があり、意味不明な言動を行うこともありますが、それには必ず理由があるといわれています。原因は何かについて、根気よくコミュニケーションをとり、探っていく必要があります。解決の鍵になる原因がわかれば、対応策も見えてくるでしょう。

 

家族のケアも忘れずに

最後に、認知症の利用者のまわりには、それを必死に支えようとしている家族がいることを付け加えておきましょう。利用者の家族をケアすることも、介護者の大切な仕事のひとつであることを忘れないようにしてください。

 

参考:

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