介護ニュース
2018年度からスタートの介護医療院、その役割とは?
2018年の介護政策の目玉のひとつになったのが「介護医療院」の新設です。これまでの介護療養病床約5.9万床、医療療養病床約7.2万床が2018年3月をもって廃止され、その受け皿として2018年度から介護医療院がスタートしました。
従来の介護療養病床や医療療養病床には、本当は自宅に帰ることが可能にもかかわらず、多様な事情で入院生活を続けなくてはいけない患者がたくさんいました。政府は医療費の削減の観点からも、この状況を改革するために、介護医療院の新設を進めたのです。
介護医療院創設の経緯
これまで療養病床には「介護療養病床」と「医療療養病床」、「特別養護老人ホーム」(特養)と「老人保健施設」(老健)がありました。なかでも医療法人などが運営する介護療養病床は、特養・老健とならび、介護保険適用による公的医療3施設と呼ばれ、特養や老健よりも重い要介護者などを受け入れ、主に医療処置とリハビリを中心に提供する施設でした。したがって、介護療養病床は介護施設ではあるものの多床室が多く、レクリエーションなどは少ない施設です。心身の状態が改善すれば退所をしなくてはならない場合が多く、病院的なイメージが強いものでした。
それにとって代わる介護医療院は、厚生労働省が「長期的な医療と介護のニーズを併せ持つ高齢者を対象とし、「日常的な医学管理」や「看取りやターミナルケア」等の医療機能と「生活施設」としての機能とを兼ね備えた施設」と説明されています。
介護医療院の特徴
介護医療院は、介護保険法上の介護保険施設ですが、医療提供施設としても法的に位置付けられ、利用者に対して「介護」に加えて「長期療養医療」を提供できるというメリットが付与されています。つまり、介護医療院は、医療・介護・住まいの3つの機能を併合したかたちの介護保険適用施設なのです。
日常的な医療が必要な重度の介護者、看取りや終末期のケアを必要とする利用者たちの受け皿が不足しているという現状に対して、医療的なケアに、生活施設としての機能を付加し、地域に根付いた恒常的な医療や介護の細かいニーズに応えようというのが介護医療院の新しいコンセプトなのです。
具体的な数値目標としては、当面の間、介護療養病床の約5.9万床と医療療養病床(25対1)の約7.2万床が移行の対象として見込まれています。
介護医療院の新設で何が変わる?
医療的ケアが最優先である患者は医療保険で医療療養病床へ入院、介護に加えて軽度な医療が必要な利用者は介護医療院に入居するというすみ分けが成立すると、医療現場の負担が減少し、不必要なベッド専有も軽減するでしょう。医師や看護師、ヘルパーなどの労働量の緩和も可能となり、同時に医療費の総額も削減できると考えられます。
介護医療院のサービス
介護医療院は利用者に寄り添った個別的なケア、地域社会との融合、連携を図ることを目標にし、看取りなど人生の最終章への対応も重要視しています。具体的なサービス例は以下のとおりです。
- 活発な日常生活を総合的に支える生活リハビリテーション(社会活動への参加など)
- 廃用性症候群からの脱却(自立支援を目的にした過剰な介護の廃止)
- 上記に関連する具体的な自立支援目的の介護(食事・入浴・排泄など)
- 摂食嚥下機能の円滑化・栄養摂取・口腔機能アップ・口腔ケアの徹底・褥瘡の防止など
- 通所リハ・訪問リハ・短期入所など施設介護とのタイアップ
- 地域への貢献(介護者養成の教室・出張講座の開催・認知症カフェ開設など)
- 利用者のプライバシーを尊重した生活援助
- 居場所づくりの推進(個人の趣味嗜好を大切にするサービス=愛着ある物の持ち込み可・音楽など趣味の継続)
- 生活環境の整備(トイレ・浴槽・ベッド・椅子テーブル・手すりなど福祉用具等の整備)
- 年中行事レクリエーションの積極的開催
- 利用者の人生の最終章における医療と介護(ACP=アドバンス・ケア・プランニング)
まとめ
2018年4月スタートの介護医療院は、利用者の自立支援の実現を促し、自宅の戻れるようになっても引き続き在宅の療養や介護を支援し、地域に開かれた交流の拠点施設として活動することが期待されています。
行政としては今後、介護医療院を積極的に運営する事業者の育成、これまでの業態からの転換スキームの推進などが急務の課題であるといえるでしょう。移行定着支援加算などのさまざまな転換インセンティブなども期間限定で設定されているので、介護事業者は引き続き、行政発信の情報を集めることが大切です。
参考: