平成31年度厚生労働省予算概算要求 3つのポイントを徹底解説

厚生労働省によると、2018年9月現在、100歳以上の高齢者人口は約7万人と、日本は人生100年時代がすぐそこまで来ています。平成31年度予算概算要求では、誰もが活躍できる社会の実現のため、「働き方改革・人づくり革命・生産性革命」や「質が高く効率的な保健・医療・介護の提供」そして「すべての人が安心して暮らせる社会に向けた福祉等の実現」を柱とした要求を行いました。ここでは、概算要求のうち介護に関わる3つのポイントについて解説します。

働き方改革では「生産性の向上」と「介護離職ゼロ」がカギ

「働き方改革・人づくり革命・生産性革命」では、「生産性の向上」と「介護離職ゼロへの取り組み」が重点要求となっています。それぞれについて詳しく見ていきましょう。

生産性の向上

生産性の向上では、モデル事業所による取り組みを通じて、具体的な取り組みを行った成果や手法を生産性向上ガイドラインに反映、研修会などを通して、全国へ展開していきます。また、このような取り組みと同時に、介護ロボットの開発と活用支援やICT活用支援の拡充なども行われます。

介護離職ゼロへの取り組み

介護離職ゼロの取り組みでは、介護人材の確保・処遇改善が行われます。まず、「介護職機能分化等による先駆的生産性向上モデル事業(仮称)」では、介護業務の効率化や生産性を図るための先駆的取り組みが支援されます。それと同時に、介護職員のステップアップやキャリアアップの支援も行われます。2019年10月からは勤続10年以上の介護福祉士に月額平均8万円の処遇改善の実施が決定しています。また、新たな人材確保のため、若者や子育て世代などを対象とした介護職の魅力をPRする全国的な広報活動も実施される予定です。

さらなる人材確保の方法として、外国からの介護人材を受け入れる環境の整備が進められます。 まず、外国人介護人材受入環境整備事業を創設し、日本語や介護に関する専門知識などの学習支援を行い、円滑に介護業務に従事できるような支援が予定されています。そして、外国人介護士が自主的に日本語を習得できるような日本語学習テキストの作成やWEBコンテンツの開発および運営が行われます。

自立支援・重度化防止と認知症対策には質の高い介護の提供が不可欠

概算要求の2つ目の柱として挙げられるのが、「質が高く効率的な保険・医療・介護の提供」です。自立支援・重度化防止に向けた取り組みの強化として、ビッグデータを活用し相対的に効果の高いアプローチを利用者に提供する「科学的介護」が推進されます。

科学的介護では、国の新たなデータベースである「CHASE」がこれから運用される予定です。CHASEには、ケアマネジャーによるアセスメントに用いられる「興味・関心シート」や、栄養マネジメント関連加算にともなうモニタリングなどの結果、訪問介護のサービス内容など、介護に関わる情報を幅広く蓄積していきます。2020年の本格運用に向け、現在検討が進められています。

また、認知症になってからも安心して暮らし続けられる地域づくりとして、早期から心理面と生活面の支援を行うため、ピア活動(認知症の本人同士が互いに相談しあう活動)を推進していきます。また、地域で認知症の人を支える仕組みの構築や、認知症を理解するための普及啓発活動や若年性認知症の人への支援などが行われます。認知症疾患医療センターについては、日常生活における支援を相談するための環境を整備し、相談機能の強化も行われる予定です。

すべての人が安心して暮らせる地域共生社会の構築を目指す

概算要求では3本目の柱として「すべての人が安心して暮らせる社会に向けた福祉等の推進」を掲げています。このなかの「地域共生社会の実現に向けた地域づくり」の項目のうち、「包括的な相談支援・地域の支え合いの再生」と「成年後見制度の利用促進のための体制整備」が介護分野に大きく関係するでしょう。

包括的な相談支援では、各分野に分かれていた相談体制を総合して行えるよう、活動拠点の整備などが推進されます。また、東京都江戸川区の全世代を対象とした包括支援センター「なごみの家」や神奈川県藤沢市の相談機能も備えた多世代交流の場である「地域の縁側」といった市町村の創意工夫ある取り組みへの支援も拡充する計画となっています。

成年後見人制度の利用促進では、成年後見制度を必要とする人が制度を利用できるような環境整備が行われます。具体的には、都道府県の支援のもとで認知症施策や障害者施策と連携をとりながら、中核機関の整備を行うなどの先駆的な取り組みが推進されます。また、中核機関や市町村職員等に対する研修を国が実施する予定です。すでに近年、市民後見法人として、市民が主体となりNPO法人や一般社団法人等を設立する例も増えてきています。

概算要求3つのポイントは一億総活躍社会の実現へつながる第一歩

平成31年度厚生労働省予算概算要求では、全世代の社会保障基盤を強化するための取り組みとして、今回紹介した3つのポイントを柱とした要求を行っています。介護にかかわる項目は特にしっかりと理解し、介護施設としても一億総活躍社会の実現に向けた取り組みを進めていきましょう。

 

参考:

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