理解と導入がすすむ介護の看取りケアとは?

従来、介護の世界では「QOL(Quality of Life)」、つまり利用者の生活の質をいかに保持し、向上させていくかという考え方が前提にあり、延命のためにどのように介護をしていくかという医療的技術論が中心にありました。そして近年、支援や介護を必要とせず心身ともに自立した生活をめざすことが国の高齢者行政の指針になってきていますが、その一方で、「QOD(Quality of Death)」=「死の質」という考え方の大切さも認識され始めています。このような流れのなかで必然的に浮かび上がってきた課題が「看取り」についてです。今回は介護における「看取り」についてまとめてみました。 

看取りの定義

公益社団法人全国老人福祉施設協議会の看取り介護指針・説明支援ツール平成27年度介護報酬改定対応版では、「看取り」を、「近い将来、死が避けられないとされた人に対し、身体的苦痛や精神的苦痛を緩和・軽減するとともに、人生の最期まで尊厳ある生活を支援すること」と定義しています。

これまで、終末期に入った高齢者は、死亡診断をする医師のいる病院に入院して最期のときを迎えるという処遇を受けることが主流でした。また、入院中は、回復へかすかな望みを持つ家族の希望で、体中にチューブや機器をつなぐ、いわゆるスパゲティ症候群といわれる延命措置も施されてきました。そして近年になり、病院でのそのような対応について、身体的、精神的苦痛をもたらしていないか、尊厳が維持されているかという見方も生まれてきました。

そのような時代の経過から生まれてきたものが、静かで安楽に死を迎えるための「看取り」という介護コンセプトといえるでしょう。

看取りケアと看取り加算とは? 

現在、病院ではなく自宅や利用者として入居している特別養護老人ホームなど介護施設においても、看取りという概念とその方法や手順が介護手法のひとつとして浸透し始めています。厚生労働省が集計した「平成27年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査(平成28年度調査)」によると、施設の看取りの方針は、「希望があれば、施設内で看取る」が78.0%、「原則、病院等に移す」は16.3%でした。また、半数以上の施設が、看取り期の入所者全員に看取り介護の計画を立てていると回答しています。

施設における看取りケアは、ベッド上での酸素吸入や点滴などの医療的なケアを中心とするものよりも、水分補給や安楽に過ごしていただくための体位変換など、通常の身体介護のケアが中心に行なわれていることが多いでしょう。

そして、介護事業者による看取りが積極的に実施されるように、すでに介護保険のなかには「看取り介護加算」が定められています。 これは、基本のサービス料の上積みされるもので、事業所の収入となります。

さらに、平成30年度に看取り介護加算が改定され、施設内での看取りがよりいっそう評価されるようになっています。具体的な加算数値は、家族からの看取り同意から4~30日は144点、死亡前日および死亡前々日は780点、死亡日は1,580点です。

介護のプロとしての看取りケア

看取りケアには、看取りに際しての介護指針(看取り介護のための各種書類の作成準備を含む)、重要事項説明書、意思確認書(急変時や終末期における医療等の有無)などの作成を行うなどの周到な準備と心構えが必要です。また、ケアマネージャーが「看取り介護計画書」を作成、中心となって医療職や介護職の迅速で的確な連携を図っていくこと、実際にベッドで看取りを行うことになる介護スタッフの役割や手順もきちんと決めておくことなども重要です。介護スタッフにとって看取りケアとは、いっしょに長い生活の時間を過ごしてきた利用者とのつらいお別れの瞬間に直面することを意味しますが、介護のプロとしての意識をしっかり持ってやりとげるべき大切な仕事といえるでしょう。

 

参考:

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