介護業務改善
介護業界にも国際化の時代到来!英語を活用し差別化を図ろう
2010年に楽天が社内英語公用化を始めましたが、一般企業における社内英語公用化は徐々に広がりを見せています。ところが介護業界では、まだ英語の必要性について議論されることはほとんどありません。しかし、介護分野でも外国人技能実習生の受け入れが始まるなど、国際化の波が押し寄せてきているのは事実です。今回は、介護業界の国際化と英語の必要性を考察します。
介護業界で英語が必要なわけ
介護業界で英語が必要となる背景には、大きく分けると3つあります。
まずは、「日本式介護」のアジア輸出を国も推し進めていることです。2016年夏に始まった官民連携プロジェクト「アジア健康構想」では、介護の国際展開を成長戦略の一環として、国際協力機構(JICA)や政府系ファンドの融資制度を活用した日本式介護のアジア輸出を後押ししています。実際に海外展開を始めている企業も出てきています。例えば、長野県にあるエフビー介護サービス株式会社は2012年に海外進出を宣言し、現在は南京の病院と提携して介護施設の建設を進めています。
次に挙げられるのが、EPAや外国人技能実習生受け入れによる、外国人介護士の増加です。2010年から2017年までにEPAにより受け入れた介護福祉士候補生の外国人介護士は約2700人となっており、2017年からは外国人技能実習生の受け入れも始まったことで、外国人介護士の数はますます増えることが予想されます。現在来日している外国人介護士の42%がフィリピン人です。フィリピンの公用語は英語およびタガログ語で、英語を話せる人が多いため、英語を話せる職員がいると環境になじむスピードが上がり、より即戦力としての活躍が期待できるでしょう。
意外と知られていませんが、3つ目の要因は日本にいる在留外国人の高齢化です。法務省入国管理局による2017年の統計では、在留資格を持つ外国人の出身地で多いのが韓国と中国、次いでベトナムとフィリピンがほぼ同数となっています。ベトナム出身者は技能実習や留学目的の来日で、若い世代の急激な増加が目立ちます。一方、韓国と中国出身の外国人はすでに高齢化が進んでおり、2003年には大阪に在日韓国人対象のデイサービスが誕生しています。残るフィリピン出身の在留者は約29万人ですが、うち50代は約4万3千人となっており、数年後にはフィリピン出身者の高齢化も進んでくる可能性があります。
今日から介護現場で英語を使おう
英語は普段から使い続けることが上達につながり、介護現場でも活用しやすくなります。早速今日から現場で英語を使ってみましょう。介護現場で英語を使用する場面は主に2つ考えられるでしょう。
1つ目は、外国人介護士や入居している外国人利用者とコミュニケーションをとる場面です。外国人介護士の出身地で最も多いのはフィリピンです。また、前述したように日本在住フィリピン出身者の高齢化も進むことから、外国人利用者の増加も見込まれます。今後は働く側と利用する側の両方でフィリピン出身者が増える可能性が高く、公用語である英語が介護現場で広く用いられるようになる日もそう遠い将来ではないかもしれません。
2つ目は、介護施設で開催される英会話教室です。レクの一環として取り入れている施設も出てきました。神奈川県相模原市にある介護付き有料老人ホーム「かみみぞ」では、元英語教師の利用者が講師となって即席英語教室を行った模様がホームページで紹介されています。また、東京都品川区にある「グッドタイムホーム不動前」では、留学経験のある職員が入居者向けに行った英会話教室が好評となり、現在では毎月開催となりました。外国語である英語を使うことは認知症予防にも有効という研究結果もあることから、介護の現場でも英語を利用者向けのサービスとして活用する機会は増えてくるでしょう。
今後、外国人の入居者が増えてくると、母国語が英語の入居者による本格的な英会話教室を開催する施設が出てくるかもしれません。他施設との差別化として、あるいは多角化経営を目指して英語を活用する事業所も現れる可能性があるでしょう。
介護業界で英訳に活用できるツールやサービス
将来的に英語が欠かせなくなるかもしれない介護業界ですが、まだ英語になじみがない人も多いでしょう。そこで活用したいのが、介護業界向けの英訳ツールやサービスです。
東京都内でも新宿区に次いで外国人が多い港区では、ウェブ上で使える介護業の翻訳用辞書を公開しています。更新頻度は9月末と3月末の年2回となっています。平成30年4月12日現在、高齢者福祉分野では70の単語が掲載されています。なお、この翻訳用辞書は英語だけでなく、中国語とハングルにも対応しており、多くの外国人が使うことを想定しているといえるでしょう。
次にご紹介するのは、ACCESS社が提供する介護業務支援システム「ケアリス」です。外国人介護士のサポートも視野に入れたツールとなっています。言語に頼らずとも理解しやすいスタンプや、職員や利用者が話した日本語を自動的に英語などのテキストに変換する音声認識機能を備えています。そのため、言語に不安を抱えやすい外国人介護士の負担を減らすことができるでしょう。このツールを活用することで、外国人介護士だけでなく介護スタッフ全員にとって働きやすい環境を整えることが可能となります。
他社との差別化を図るためにも今から英語を
「日本式介護」のアジア輸出推進や、今後増加が期待される外国人介護士の影響もあり、介護業界でも英語の必要性は高まってきています。介護業界に英語が必要となる日もそう遠い未来ではないでしょう。今から英語を取り入れておけば、他社との差別化も図れるのではないでしょうか。
参考:
- 【MISSION】信州発:アジアに日本式介護の真髄「心」のサービスを根付かせよ|GLOBAL MISSON TIMES
- 外国人介護士の現状|公益社団法人 国際厚生事業団
- 「英語講座!?」|株式会社アルプスの杜「かみみぞ」
- 英会話教室のある介護付有料老人ホーム<後編>|介護ポストセブン
- 東京港区が介護業の翻訳用辞書を公開|ケアタイムズ新聞
- carelis|ACCESS
- 在住外国人の現状を知る|一般財団法人自治体国際化協会多文化共生ポータルサイト
- e-stat在留外国人統計より、「国籍・地域別 年齢・男女別 総在留外国人 2017年12月調査分(Excel)
- アジア健康構想に向けた基本方針(案)|政府官邸健康・医療戦略推進本部
- 福祉・介護人材確保対策等について|厚生労働省
- 平成29年末現在における在留外国人数について(確定値) | 出入国在留管理庁
- 第二言語が認知症を遅らせる可能性の研究結果についてのニュース|BBC NEWS(英語)