ジェノグラムを活用して多職種連携をスムーズに行おう

多職種が連携して行う介護支援では、利用者の家族関係を知ることはとても大切です。しかし、家族関係というのは個々のケースによって違い、複雑に入り組んでいる場合もあります。そこで活用したいのが「ジェノグラム」です。ジェノグラムを使用すれば一目で家族関係を把握できるため、情報共有がしやすくなります。今回は、ジェノグラムのツールや活用例をご紹介しましょう。

ジェノグラムとは家族関係をわかりやすく表したもの

介護支援を行ううえで重要なのが、対象者を取り巻く人的環境を知ることです。身近な人間関係である家族の関係性はとくに、支援に関わる者全てが正しく把握しておくべき最も大切な情報です。この情報を把握するために有用なのがジェノグラム、3世代以上の人間関係を盛り込んだ家族関係図です。だれにでもわかる記号を使い、家族の構成や家族内の関係性が一目でわかるようになっています。

介護現場では人的環境を知るツールとして、エコマップもよく使われています。エコマップは、対象者にどのような社会資源が関わっているかをだれが見てもわかるように図式化したものです。ここでいう社会資源とは、家族や兄弟姉妹、友人や近隣住民、そして医療と介護の関係各所などです。

エコマップでは家族も含めたすべての社会資源を記入しますが、ジェノグラムでは家族関係に焦点をあわせているところがポイントです。

ジェノグラムは有料ツールを活用すれば簡単に作れる

手書きのことも多いジェノグラムですが、パソコンで作ることも可能です。しかし記号を多用するため、パソコンに慣れていないとうまく作れないこともあるでしょう。そこで活用したいのが有料ツールです。今回は操作が簡単な有料ツールを2つご紹介します。

AMS「ジェノグラム作成(Excel版)」

医療と福祉に特化した業務システムを開発しているAMSが提供しているのが、「ジェノグラム作成(Excel版)」です。操作が非常に簡単で、1度ジェノグラムを作成しておけば、家族関係に変化があったときに、シートコピーで最新情報に基づいたジェノグラムへの更新が容易です。最大の強みは、87種類もの家族構成と関係性画像が用意してあることでしょう。この豊富な構成のおかげで、ほとんどの家族関係を表現することができます。なお、このツールではマクロを使用するため、実際の活用の際には全てのマクロを有効にする必要があります。

VINTAGE「かんたんジェノグラム」

VINTAGEの「かんたんジェノグラム」では、マウス操作のみで簡単にジェノグラムを作ることができます。パソコンに不慣れな人でも作りやすく、図形と人物の2種類のアイコンを用意しているため、導入初期の図形の意味が周知できていないときでもわかりやすいでしょう。できあがったジェノグラムはWordやExcelなどのビジネス文書に挿入することもでき、外部への書類へも活用が可能です。家族関係が変わった際には保存したファイルでの修正もできます。

介護現場におけるジェノグラム活用例

ジェノグラムは介護現場でどのように活用できるのか、見ていきましょう。

初回訪問のインテーク面接時

初回訪問のインテーク面接では、対象者や家族からいろいろな情報を聞き取ります。家族関係は今後の支援に影響を与えるので、しっかり把握する必要がありますが、プライバシーに関わる部分でもあるので、何度も尋ねるのがはばかれることもあるでしょう。そこで、話を聞きながら図式で書いていくと、混乱しがちな家族の関係性も即座に表すことができるので、正確にとらえやすくなります。

担当者会議

定期的に開催される担当者会議では、対象者に関わるさまざまな関係者が参加して情報共有を行います。会議に参加する関係者は介護職だけとは限らないため、ジェノグラムのようにだれが見てもわかりやすい図があると、会議もスムーズに進めることができます。家族関係に変化があった場合には、どこが変わったのかを指摘しやすく、理解もしやすいでしょう。

施設入所時

対象者が施設に入所することになった際にも、ジェノグラムが活用できます。在宅介護では、多くの職種が担当者会議などを経て定期的に情報共有を行います。しかし、施設入所となった場合には、ショートステイなどの利用がない限り、入所が決まるまで対象者の情報がわかりません。対象者の状態によっては急に入所が決まることもあり、わずかな時間で情報を把握しなくてはならない場合もあるでしょう。そのようなときでもジェノグラムがあれば、キーパーソンはだれなのか、これまでだれと暮らしてきたのかを支援に関わる人全員が一目で知ることができます。

ジェノグラムは初回訪問時にこそ活用しよう

多職種連携が重要な介護現場において、だれが見ても理解しやすいジェノグラムは、これからますます活用していきたいツールです。とくに、最初の訪問時に家族関係がきちんと確認できていると、その後の支援導入をスムーズに行うことができます。適切な支援が行えるよう、ぜひ初回訪問からジェノグラムを活用していきましょう。

 

参考:

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