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介護人材不足に潜在的労働力の活用「介護サポーター」
超高齢化社会へ向かうにつれ、介護業界におけるますますの人材不足が懸念されています。今回は、2018年4月に出された経済産業省の報告書で要介護者の増加状況と介護人材の供給体制を確認するとともに、人材不足への方策として提言されている「潜在的労働力の活用」にあたる、「介護サポーター」についてご紹介します。
2035年の介護職員の需給状況は?
経済産業省の2015年の推計によると、2035年の介護人材の需要は295万人。それに対し、供給は227万人に留まり、68万人が不足すると見込まれています。
これは、85歳以上の人口比率が急速に拡大し、2035年には人口の8~9%を占めるとされていることと無関係ではありません。
高齢化社会が進行するにつれて、要介護の認定者数も増えていきます。その増加ペースは2035年まで止まることはないと見込まれており、2015年に約620万人だった要介護認定者数は、2035年には約960万人になると推計されています。そして、要介護認定者数の増加は、一部地域に偏ることなく、日本全体で見られると予測されています。
そして、2016年の段階ですでに約6割の介護事業所が従業員の不足を実感しています。従業員不足の理由としては、「採用が困難である」が調査回答の7割以上を占めていました。
68万人の人材不足解消のための方策は?
経済産業省では、68万人の不足が予想される介護職員の需給ギャップに対して、以下の3つの方策で克服が可能であると提言しています。
- ITや機器の導入
ITや機器などを導入・活用することで労働負荷・労働時間を軽減し、人材需要約51万人分を削減する。 - 離職率の低下
ITや機器などの導入や処遇改善などによって離職率を低減することで、約8万人分の人材供給をまかなう。 - 潜在的労働力を活用
高齢者などの潜在的な労働力を活用することで、約9万人分の人材を供給する。
「介護サポーター」とは?
上記3つの提言のなかから、潜在的労働力の活用にあたる「介護サポーター」について取り上げてみましょう。
介護サポーターは、介護の専門性が高くない周辺業務を担うもので、キャリアアップを望んでいない主婦や高齢者といった潜在的労働力を、介護人材に取り込むことを目的としています。
介護サポーターの導入事例
三重県介護老人保健施設協会では、「介護助手」という名称で元気な高齢者を介護サポーターに雇用しています。
介護助手が担当する周辺業務は、難易度によって3つに分類されています。介護助手も経験やスキルによって3つのクラスに分かれており、能力に応じた業務を担当するスタイルを採用しています。
例として、食事にともなう介助の内容を介護助手のクラス別に見てみましょう。
- Aクラス
トロミ茶やお茶ゼリー作り/食堂での見守り介助 - Bクラス
自助具の洗浄/入所者の誘導(食堂~居室など)/入所者へのエプロン着用 - Cクラス
エプロンや自助具、おしぼりを配る/配膳や下膳/配膳台車の返却/テーブル拭きや床掃除
職場研修などを通してステップアップできる仕組みが取られており、やる気に応えられるようになっています。
介護サポーターの導入効果
介護サポーターの導入によって、実際に以下のような効果が得られています。
- 介護職員の残業時間削減(介護サポーターの人件費は削減された残業手当でまかなえる)
- 介護サポーターを1名雇うことによって、介護職員1人の直接介護に関わる時間が1日平均190分増加
- 利用者に寄り添うケアが実現し、事故発生のリスクも低下
- 認知症利用者の個別対応が可能に
潜在的労働力の活用は業務の整理から
今後ますます進むと考えられる人材不足への対策として、介護施設は多様な人材を受け入れていかなければなりません。学生や主婦、高齢者などの潜在的労働力を活用するためには、どの業務にどれぐらいの知識やスキルが必要なのかといった見極めや見直しが必要になるでしょう。
参考: