介護業務改善
2018年度介護報酬改定、施設では「排せつ」に対する支援が新たなポイントに
2018年度の介護報酬改定における特養などの施設向けの施策では、さまざまな項目が新しい算定対象としてリストアップされています。例えば、看取りの強化、介護ロボットやICTの導入を推進する事業所には有利な算定設定がされる一方、不当な身体拘束が行われている施設に対しては減算の厳格化が盛り込まれました。そのなかでも特筆すべきキーワードが、「褥瘡(じょくそう)」と「排せつ」。廃用症候群である褥瘡は、施設介護などにおいて深刻な問題となっていますが、それ以上の問題意識をもって今回の算定改定に取り上げられているのが「排せつ」に対する支援です。
脱・オムツに取り組む事業者には報酬増
厚生労働省は2018年度から、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などで紙オムツを使用している利用者が、排せつを改善しオムツなしで生活できるようになった場合、その取り組みに対して介護報酬を手厚くする方針です。
これは、自立支援、居宅での生活を推進する政府のコンセプトを反映させたものです。今後激増していく要介護者への施設の対応には、在宅復帰への誘導も重要な要素として含まれることになります。
在宅復帰を目指すために、介護施設にはこれまでオムツやリハビリパンツに頼っていた利用者がトイレで介助を受けずに排せつできるよう支援していくことが求められます。これまでトイレでの排せつに介助を要した利用者がどのようにすれば改善されたのか、原因分析およびその改善結果を示し得た施設は手厚い報酬が受けられます。
たとえ一時的なものだとしても、施設利用者が自宅に戻って過ごせるような環境をつくっていこうという国の方針に対して、今回の介護報酬改定によって介護施設もより協調しやすくなったといえるでしょう。
具体的にはどのような支援が必要なのか?
それでは、施設が利用者の排せつ機能を向上させ、最終的に新加算を積極的に取得するためにはどのような改善をしていけばいいのでしょうか。
厚生労働省の「平成30年度介護報酬改定における各サービス毎の改定事項について」には「排せつ障害等のため、排せに介護を要する特別養護老人ホーム等の入所者に対し、多職種が協働して支援計画を作成し、その計画に基づき支援した場合の新たな評価を設ける」とあり、この4月から月100単位の算定を新設しました。
施設では、排せつに介護を要する(排尿や排便の状態が「一部介助」または「全介助」と評価)利用者に適切な対応を行うことで要介護状態の軽減が見込まれる場合、特別な排せつ支援によって半年以内に「全介助」から「一部介助」以上に、もしくは「一部介助」から「見守り」以上に改善されると排せつ支援加算の対象になります。その支援に先立っては、医師や看護師、ケアマネージャー、現場の担当介護職員らの多職種が、利用者が排せつに介護を要する原因を分析し、国指定のガイドラインに基づく支援計画を作成します。例えば、ベッドの横に置いたポータブルトイレでの排せつができるようになるためにはどうすればいいかなど、具体的な目標を設定し、達成に向けて支援していきます。
利用者が自宅に帰れる日を目指して
利用者が努力をして、また周囲の介護スタッフが協働して排せつの改善にあたることは、介護保険における根本的な理念、自立支援を反映したものでもあります。また、今回の排せつ支援に対する加算新設の最終的な目標は、一時的でもいいので利用者が自宅に戻れるということです。そして、自宅に戻れた際に、家族の大きな負担となり、心配の種でもある排せつが改善されていることは、非常に大切だといえるでしょう。それには、施設介護に関わる多職種の積極的な計画、対応、現場の介護職の努力が必要です。良質な排せつケアを実現するために、介護事業者もより積極的な人材育成と支援を図っていくべきだといえそうです。
参考: