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アウトカム評価の導入によって予想されるデイサービスへの影響は?
2018年度の介護報酬改定では、通所介護(デイサービス)事業所において「心身機能の維持に係るアウトカム評価」が導入されます。これは、利用者の自立支援と要介護状態の重度化防止のために、より質の高い介護サービスを推進することを目的としています。ほかにも、自立支援と重度化防止を推進するためにデイサービスなどのスタッフと外部のリハビリテーション専門職が連携し、機能訓練のマネジメントを評価する「生活機能向上連携加算」も創設されます。また、利用者の心身機能の維持促進を目的に、デイサービスなどにおける機能訓練指導員の確保を促すべく、一定の実務経験を積んだはり師・きゅう師が、機能訓練指導員の対象資格に追加されます。これらによって、数多くのデイサービスが影響を受けることになるでしょう。
今回は、アウトカム評価がデイサービスの施設にもたらす影響について考えてみます。
アウトカム評価とは?
アウトカム評価は、「利用者のADL(日常生活動作)を維持・改善させた結果」を評価する目的で導入されます。具体的な評価方法には、リハビリの現場でよく使われている「バーセルインデックス」が用いられる予定です。バーセルインデックスは利用者のADLを評価する指標で、以下の10項目について「どの程度できるか」を点数化します。
- 食事
- 車いすからベッドへの移動
- 整容
- トイレ動作
- 入浴
- 歩行
- 階段昇降
- 着替え
- 排便コントロール
- 排尿コントロール
そして、アウトカム評価に応じて加算が発生するのが、2018年度に新設される「ADL維持加算」です。
それでは、アウトカム評価の導入によって、どのような影響が予想されるのでしょうか。
残存機能の維持・向上に目を向けたケアの提供につながる
デイサービスの事業所は数が多いこともあって、ケアの質もさまざまです。なかには、食事や入浴ばかりで特にイベントもなく、利用者には毎日座ってテレビを観てもらっているだけという施設もあるようです。このような施設では、アウトカム評価導入による加算を受けるのは難しいでしょう。
アウトカム評価で加算を得るには、毎日の機能訓練や日々の生活のなかでのトレーングが必要です。理学療法士や機能訓練指導員と連携し、利用者ごとにADL向上に向けたケアの提供やプランの作成が必要になると考えられます。現在、機能改善に関する取り組みを行っていない施設では、「個別機能訓練加算」と2018年度に新設される「生活機能向上訓練加算」の取得を目指すといいでしょう。
ケアマネや利用者からの評価につながる
バーセルインデックスなどのADL指標を活用してきちんとアセスメントを行い、利用者一人ひとりのADLの改善度をデータとして明確にすることができれば、機能維持・改善への最適な取り組み方法を見つけ出すのに役立ちます。利用者の状況に合わせた体系的なマニュアル作りができると、スタッフによる介護のばらつきが減少し、事業所全体のサービスが向上するでしょう。
そして、ADL指標を用いた改善度の評価は、利用者や利用者の家族、ケアマネに対し、事業所の実績として目に見える形でアピールする材料となります。利用者の自立支援のために、いかに熱心に取り組んでいるのか、いかに実績をあげているのかを、説得力をもって指し示すことができるのです。
介護スタッフの作業量は増加する?
アウトカム評価の導入によって、利用者のADL(日常生活動作)の維持、改善に意識的に取り組むようになると、利用者一人ひとりの心身の状況や意向を理解し、自立への動機づけを行いながら支援しなければなりません。そのため、現場の介護スタッフの作業量が増加するのではないかと予想されます。また、業務スキームの変更も必要になるでしょう。
IT機器やシステムの導入のような、スタッフの負担軽減や業務全体を効率化する体制作りも必要になるでしょう。
よりよいサービスの実現を目指し新加算取得を検討しよう
厚生労働省の2015年の調査結果によると、アセスメントにADL指標を用いていないデイサービスは49.2%にのぼりました。さらにデイサービスは、アセスメントにおけるADL評価指標の活用率が27.3%しかありません。この数字は活用率が76.7%の通所リハに比べてかなり低く、利用者の残存機能の維持と向上に向けたサービスはまだ十分ではないところが多いことをうかがえます。
今後、超高齢化社会を迎えるにあたって、国の自立支援と重度化防止を主軸にするという体制は強まり、社会保障費の問題から基本報酬の見直しも続くと考えられます。今後、これまでの方針や経営戦略の見直しを迫られる事業所はいっそう増えていくでしょう。
アウトカム評価の加算につながるサービスを提供できるようになると事業所の評判が高まり、近隣の競合事業所に対する優位性も増します。利用者へのよりよいサービスと経営の安定化を目指し、他事業所に先駆けて経営方針やサービスの見直しを行ってみてはいかがでしょうか。
参考: