八方美人は禁物!ブレない管理職の存在が介護スタッフを育てる

介護スタッフや利用者の意見・提案をすべて聞こうとして、八方美人になってはいないでしょうか。管理職がブレない考え方を持ち、ときには方針に相反する提案は断ることで、介護スタッフは次第にまとまっていくものです。そこで今回は、八方美人的な対応がよくない理由と、どうすればブレない考え方を体現できるのかを確認していきましょう。

八方美人の管理職のもとでは介護スタッフは成長しない

さまざまな介護スタッフの意見や提案を聞き、すべての人が喜ぶような対応方法を模索することは、管理職としてほめられたものではありません。実は、管理職がそのような八方美人的な対応をすると、スタッフの成長を妨げる原因になる可能性があるのです。

介護スタッフだけではなく、利用者もさまざまな考え方を持っています。ときには決断を下したことによって、クレームが出ることもあるでしょう。そこで「1人も困る人がいないようにしよう」と決断を取り消し、代替案を考えるのは、決断を先送りにすることになります。

いつまで経っても組織の方向性が示されないと、スタッフ一人ひとりが「各自が考える最善の方法」で仕事をするようになり、バラバラの働き方をするようになります。そうなるとチームとしてまとまることができず、お互いの協力が難しくなります。そして、次第に意見交換することがなくなり、介護スタッフにとっては成長の機会を逃してしまうことにもなるのです。

どうすれば介護スタッフがまとまるのか

スタッフをうまくまとめるためには「利用者や介護スタッフの意見・提案はあくまでも参考レベル」と考えることが必要です。そして、管理職が何らかの決断を下したときには、困る人が少しは出てくるものだと考えるようにしましょう。つまり、誰も困らない方法を探るのではなく、判断や決断のもととなる基準や方向性を明確にし、それに合わない意見や提案ははっきりと断るべきなのです。

基準や方向性は、施設の方針に沿って決めることになります。しかし、施設は利用者のためのものであるため、利用者寄りの基準や方向性になりがちかもしれません。そうなると、介護スタッフの業務が増えすぎてしまう原因にもなるので注意が必要です。逆に介護スタッフに寄りすぎると、楽をしようとするスタッフの意見によって必要な介助が削られてしまう可能性があります。

したがって、基準や方向性は施設の方針を参考にしたうえで、「中立的な立場」で決めるようにしましょう。そして、基準や方向性から外れた案をはっきり断ることで、介護スタッフや利用者の過度の不満を抑えつつ「どこまでがOKでどこからがNGか」を明確にしてください。

実践するのが難しいと感じるときは

今まで「角を立てないように」と気を使っていた人にとって、基準や方向性にそぐわない意見をはっきりと断るのは簡単なことではないでしょう。そのような場合には、次のような方法を試してみてください。

数字やデータを使って説明する

部下に何か言われたときに反論できる自信がないときは、数字を使って話をするようにしてみましょう。

例えば、「水分補給は、時間の無駄だからと回数を減らそう」という意見を却下したい場合には、「人には1日どれほどの水分量が必要で、利用者は現在どれほどの水分がとれているのか」という角度から説明します。もし、利用者の水分摂取が1日に必要な量のギリギリのラインだったなら、水分補給の回数を減らそうという意見は消えるはずです。

また、「トイレに連れて行っても、すでにオムツの中に排尿していることが多いからトイレ誘導をやめよう」と意見する人がいる場合には、以前のデータと比較してトイレでの排尿成功率がどの程度上がっているのか確認しましょう。成功率が上がっていることがわかれば、「トイレ誘導を続けていこう」と説得しやすくなります。

このように、数字やデータを用いると、聞き入れるべきではない意見を却下しやすくなります。さらに、却下の理由を説明する際に、相手が納得しやすいというメリットもあります。

ただし、数字を用いた説明をするには、普段からさまざまなデータを集めておかなければなりません。煩雑な情報収集作業を容易にする、ICTの導入を検討するのもいいでしょう。

後ろ盾をつくる

スタッフや利用者の意見や提案を却下するときに、1人でそれを伝えるのは不安なものです。そのようなケースでは、上司と一緒に伝えるようにすることをおすすめします。上司を精神的な後ろ盾とすれば、不安から八方美人的な対応になるのを回避できるでしょう。

管理職は毅然と方向性を指し示すことが重要

「困る人が1人もいないように」という考え方が原因で、決断が先延ばしになってはいないでしょうか。心当たりがある場合は、基準や方向性をしっかりと持ち、それをもとに決断を下すようにしてください。

管理職がブレずに方向性を指し示すことで、介護スタッフは同じ方向を向いて仕事にあたれます。そして、スタッフ同士の積極的な情報共有やアドバイスが実現し、個々のスキルアップも期待できるでしょう。

 

参考:

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