介護業務改善
オムツ交換の回数検討で利用者・介護スタッフ・経営者の皆にメリット
介護の仕事のなかで回数も多く、腰への負担も大きいオムツ交換。特に夜勤中は、少ない介護スタッフで多くの利用者のオムツ交換を行う必要があるため、体力的・精神的な負担がますます大きくなります。
実はオムツ交換の回数を見直すと、利用者や介護スタッフ、経営者にまでメリットがあるといいます。そこで今回は、オムツ交換の回数に焦点をあわせて考えてみましょう。
オムツ交換の回数を検討するメリット
オムツ交換の回数を見直すということは、オムツ交換の回数を減らし、トイレ誘導の回数を増やすということになります。もちろん、やみくもにトイレ誘導の回数を増やすというわけではありません。
トイレ誘導を増やすことによるメリットについて、介護スタッフや経営者など、それぞれの立場から確認していきましょう。
介護スタッフのメリット
オムツ交換は、ベッドの高さを調節したり、体への負荷を減らすボディメカニクスを駆使したりしても、介護スタッフに体力的な負担がかかることは避けられません。
また、排便をしていた場合は汚れる部分が広い範囲に渡っているため、その処理にも多くの時間を取られてしまいます。ほかにも業務がたくさんあるなか、便処理でさらに時間を取られてしまっては、精神的な負担も感じることになるでしょう。
オムツ交換の回数を減らすことができれば、介護スタッフの体力的、精神的な負担を軽減することができます。
利用者・利用者家族のメリット
オムツで排泄をすることは、決して気持ちのいいものではありません。ときにはオムツによるムレや汚れが肌トラブルにつながったり、就寝中のオムツ交換で目が覚めてしまい、眠れなくなったりということも起こります。また、利用者の家族にとっても、オムツ交換の回数が増えてしまうと、それだけオムツ代がかかることになり、金銭的な負担が大きくなります。
トイレで排泄することができるようになれば、オムツの使用によって利用者やその家族に生じるデメリットを最小限に抑えることができます。
経営者のメリット
利用者やその家族にとってメリットがある施設は、たとえ入居待ちをしてでも入りたいと思うものです。前述したように、オムツ交換の回数を見直すと、利用者やその家族に大きなメリットがあります。実績を積み重ねれば「オムツを外すことができる施設」として強力なアピール材料になることでしょう。
また、オムツ交換の回数見直しによって、介護スタッフの身体・精神的な負担を大きく軽減できると定着率の向上が期待できます。そうなれば、採用コストや新たな介護スタッフの教育にかかる手間を大きく省くことができ、安定した運営にもつながるでしょう。
QOL低下防止のためにしっかりとした事前調査を
オムツ交換の回数を見直すといっても、単純にオムツ交換の回数を減らせばいいというわけではありません。無計画にオムツ交換の回数を減らしてしまうと、失禁が増えてしまう可能性があります。そうなると利用者の自尊心を傷つけてしまうことがあり、QOLの低下につながる恐れがあります。
また、失禁を防ぐために、トイレ誘導の回数をやみくもに増やすことも考えものです。トイレ誘導にはスタッフの手が必要なので、トイレ誘導の回数を増やすと、その分のスタッフの負担は増えるからです。また、頻繁にトイレに連れて行かれる利用者側も負担が大きくなります。
したがって、効果的にオムツ交換の回数を減らすためには、しっかりとした事前調査が必要です。具体的にはオムツ交換の度に量や時間などをチェックして「どのタイミングでトイレ誘導を行えば、トイレで排尿できる可能性が高いか」ということ探っていきます。データが集まったら、それをもとに適切なトイレ誘導のタイミングを見定め、日ごろの業務に落とし込んでいきます。
このデータ集めは、実際にやってみると意外に手間がかかります。場合によっては記録忘れが生じることもあるでしょう。記録漏れを防ぎ、なおかつ入力作業を手軽にするためには、データ管理がしやすいICTの導入を検討するといいかもしれません。
継続的に評価をすることでさらにオムツ交換の回数は減らせる
収集したデータからトイレ誘導のタイミングを決めても、それで終わりにしてはいけません。人の身体は日々変わっていくものです。そのため、ある日を境に「今までのタイミングでは、すでにパット内に失禁していることが増えてきた」ということがあるかもしれません。
オムツ交換の回数を継続的に減らしていくためには、定期的な評価や計画変更が必要になります。定期的にデータを見つめ直して、トイレ誘導のタイミングを修正しましょう。
トイレ誘導が功をなすと、トイレでの排泄習慣がなくなっていた人が、トイレで排泄する習慣を思い出し、尿意を訴えることができるようになることもあります。利用者が尿意を訴えることができるようになると、オムツ交換の回数を大幅に減らすことが可能になるでしょう。
皆のメリットのためにオムツ交換の回数を検討しよう
オムツ交換を減らしてトイレ誘導を増やすためには、データ集めや計画作成、計画の業務への落とし込みなど、最初の作業量は決して少なくありません。
しかし、一度計画実行までこぎつけることができたら、あとは定期的にデータと計画を見直し、問題がある点を少し修正するだけでいいのです。大きな手間を取られることはほとんどありません。
オムツ交換の回数を見直してトイレ誘導を増やす方法は、誰にとっても大きなメリットがある方法です。自施設にも導入することができないか検討してみましょう。