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介護施設で自立支援をするメリットは?負担軽減やコスト削減になる理由
介護施設における自立支援は、今後さらにニーズが高くなる可能性があります。そこで今回は、自立支援として利用者にどのようなサポートをすればよいのでしょうか。介護施設にとって、利用者にとって、自立支援を行えばどのようなメリットが得られるのか、考えてみましょう。
自立支援とは何か?介護施設に求められる働き
まず、一般的な自立支援のあり方と、賛否両論を巻き起こしている国際医療福祉大学大学院教授竹内孝仁氏の考え方についてご紹介します。
介護施設で実施されている一般的な「自立支援」
そもそも、介護における自立支援とはどのような行為を指すのでしょうか? 一般的には、利用者が自分でできることは自分で行ってもらい、できないことは介護スタッフがサポートするという考え方を指すケースが多いようです。まだ体を動かせる利用者に対して、身の回りのお世話をすべて介護スタッフが行ってしまうと、利用者の身体機能や精神機能の低下につながる可能性があるからです。利用者が自分らしく生活するためにも、自立支援は欠かせないものでしょう。
竹内氏の掲げる自立支援の特徴
では次に、高齢者介護の分野で広く知られている竹内氏の掲げる自立支援について見ていきましょう。2013年2月に日本経済新聞(電子版)で公開されたインタビューによると、竹内氏は自立支援を「普通の状態」に戻れるようにすることだと解説しています。
歩行が困難な人であれば歩行の訓練をし、流動栄養物を取っている人であれば常食化する。このような自立を目指した支援をする「治す介護」が、介護施設のあり方として望ましいと述べています。
「治す介護」のメリットとは?介護施設のコスト削減も
では、竹内氏の掲げる「治す介護」が実現することで、利用者の生活に、そして介護施設にどのような変化が生まれるのでしょうか? この章では竹内氏の「歩くことが自立につながる」という考え方を元に、自立支援介護のメリットについて考えていきます。
自立支援によって生じるメリット
- 歩けるようになれば、便通が良くなり活動も活発になります。
- 常食にすることで、利用者に食べる楽しさが生まれます。
- 食堂での食事により、利用者同士のコミュニケーションが活発になります。
- 「おむつゼロ」や「普通食」が実現すると、介護施設のコスト削減につながります。
- 「在宅復帰特養」の役割を担うことで、顧客確保・他施設との差別化につながります。
- 自立支援に価値を見出した介護スタッフは、離職しにくくなります。
上記のメリットは、どれも密接に関連しあっています。例えば、利用者が歩けるようになれば、自力でトイレに行けるためおむつが必要なくなるでしょう。そして、そのことは本人にとって生きる励みになるだけでなく、介護スタッフの軽減負担ややりがいにもつながります。このような理由から、竹内氏は利用者の生活を「普通」に近づけることが重要だと述べているのです。
なぜ自立支援は難しい?問題点と課題
利用者が普通の生活に戻ることを目指す自立支援において、歩行は大切な役割を持ちます。とはいえ、今までほぼ寝たきりだった利用者が実際に歩けるようになるのか……という疑問を感じる人は多いでしょう。
この点について、竹内氏はインタビューのなかで、介護施設での取り組みによって要介護度4から歩けるようになった人がおり、要介護度5の人でも、つかまり立ちで約5秒倒れずにいられれば、歩行器を使った訓練で、少し支えてあげることが必要ですが、1か月後くらいには手すりにつかまってトイレに行けるようになると述べています。
しかし、現状においては、竹内氏が提唱しているような自立支援を実施することは難しいようです。ほとんどの介護専門学校では「自立支援に向けた介護」が教育内容に含まれていないという問題点があると、竹内氏は指摘しています。「治す介護」を実現するには、介護施設での教育が課題のひとつになるかもしれません。
自立支援のために介護施設ができることは?
利用者が自分のことを自分でできるようになれば、QOL(クオリティ・オブ・ライフ。生活の質)が改善するだけでなく、介護スタッフの負担軽減にもつながります。介護施設におけるおむつゼロや常食が実現できれば、コスト削減も期待できるでしょう。自立支援を進めていくことで、「要介護になっても治してくれる施設」として認識されるようになると、自施設の優位性がぐっと高まる可能性があります。ニーズが高まるなか、どのような自立支援を行っていくとよいのか、常に考えていきたいものです。
参考: