介護施設での水分不足を防ぐには?記録システムの賢い活用法

利用者の健康を維持するために、毎日の水分補給は欠かせません。特に高齢の利用者については、水分不足による認知機能や食欲・体力の低下を避けるためにも、水分補給の状態はこまめに確認しておきたいところです。介護施設ができる対策としては、現場での声掛けや記録をとるなどの方法がありますが、どのような点に気をつければよいのでしょうか?

なぜ高齢者にとって水分補給が重要なのか

水分が不足すると、脱水症や体力の低下など健康面にさまざまな悪影響を与える可能性があります。では、いったいどのくらいの水分を補給すればよいのでしょうか? また、高齢者はなぜ頻繁に水分をとらなければならないのでしょうか? 基本的な知識について再確認しましょう。

高齢者が脱水症状に陥りやすい理由

高齢になると、筋肉量の減少や腎臓機能の低下が原因で、体内に水分を蓄えにくくなります。若い人たちにとっては水分をとらなくても全く問題のない数時間であっても、高齢の利用者が同じ状態になると脱水症に陥る可能性が出てきます。

体に蓄えられている水分のうち、5%を失っただけでも脱水症状などが現れるとのこと。特に、猛暑が続く時期などは注意が必要でしょう。

水分不足で食欲や体力が低下

水分不足がもたらす危険性は、脱水症だけではありません。十分な水分を補給していないと、認知機能・食欲・体力の低下や、心筋梗塞・脳梗塞などを引き起こす要因にもなるのです。

あまり水分をとっていない利用者に対しては、介護職員の方から声掛けをしてみましょう。薬や治療に頼らなくても、生活習慣の見直しを行うだけで利用者の体調悪化を防げる可能性があります。

利用者のなかには「トイレに行く回数が増えるので、水を飲みたくない」という人もいますが、人間は1日に2.5リットルの水を必要とします。食事で摂取する水分だけでは1リットル程度にしかならないため、飲み水でこまめに水分を補給するよう促しましょう。

水分補給のタイミングと注意点

水分不足にならないように気を配ることで、脱水による身体への悪影響を防ぐことができます。では、1日のなかでいつごろ、利用者に水分補給を促せばよいのでしょうか?

就寝前・起床時・入浴前後などがタイミングとしておすすめです。というのも、入浴中や就寝中には普段より多く汗をかくため、失った水分を補給する必要があるからです。同様の理由から、軽い散歩や歩行訓練の前後、室温が平時より高い場合にも水分摂取を促すとよいでしょう。

また、のどの渇きを利用者が感じる前に水分を補給するようご注意ください。「のどが渇いた」と感じたとき、体内ではすでに脱水が始まっているといいます。特に、高齢者では、のどの渇きを感じにくくなっている場合があります。利用者の水分補給は早めに、を心がけましょう。

データのグラフ化が「気づき」につながる

脱水症の確認方法はいくつかあるものの、高齢者の場合はわかりにくいケースが少なくありません。そのため、摂取水分量のデータを記録しておくことが大切になります。

記録の際には介護日誌に数値を入力するだけでなく、介護記録システムなどを利用してグラフ化しておくと、水分量が不足しているときに気づきやすくなるでしょう。後々、ミーティングなどで記録内容を使用する場合にも、グラフの方が説明しやすいというメリットがあります。

また、用紙への記録とは異なり、記録システムであれば入力内容がリアルタイムで反映されます。そのため、現場の介護士がいち早く水分不足に対応できるでしょう。つまり、職員間での情報共有がしやすくなるのです。

グラフは介護業務記録システムやエクセルを利用して作成することができますが、操作性・見やすさ・情報共有のしやすさを重視するなら、記録システムの方が便利でしょう。

データの記録が利用者の体調管理に役立つ

高齢者はもちろんのこと、年齢にかかわらず、水分補給は健康維持のために重要です。利用者が施設で快適に過ごすためにも、介護現場では水分補給がきちんと行われているか確認する必要があります。現場で水分補給のタイミングに気をつけるだけでなく、毎日の摂取量をデータに残すなどのシステムを使った方法を導入することも、水分不足対策として効果的でしょう。

介護現場におけるデータを活用した改善取組の事例

利用者の水分補給について、データを活用して改善策を検討した事例を紹介します。2013年2月に開催された「平成24年度 全国老人福祉施設研究会議(愛知・名古屋会議)」において、認知症対応型通所介護 ふたばデイサービスセンターが「効果的な水分摂取の方法論」という研究発表を行い、奨励賞を受賞しました。
この研究は、利用者の水分の摂取が重要だと認識していながら実施できていなかったため、その改善策についてデータを基に検討する、という内容となっています。検討材料となったデータは以下のようなものです。

  • 各利用者の水分摂取量
  • 摂取した水分の種類(お茶、スポーツドリンクなど)
  • 種類別に見た水分摂取量
  • 時間帯別の水分摂取量
  • 水分の温度
  • コップの種類

このようなデータを基に、水分摂取をスムーズに行うための条件を検討し、施設での利用者への水分提供の方法を変更するなどして改善につなげています。

このように、データを用いた検討を行う場合、手書きのデータや職員個々人の頭の中にしかない状態では時間がかかってしまいます。その点、システムを活用することでスピーディな検討を行うことができ、利用者へのサービス向上が期待できます。

  

参考:

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