平成29年度 介護職員処遇改善加算(新加算)及びキャリアパス要件3の増設について

平成29年度より増設された「介護職員処遇改善加算(新加算)」及び「キャリアパス要件3」。現場で働く介護職員たちにとっては、とても気になる重要なニュースではないでしょうか。今回はこの介護職員処遇改善加算(以降、新加算)及びキャリアパス要件3の増設について詳しく紹介します。

新加算及びキャリアパス要件3が増設された背景は?

厚生労働省資料によると、平成27年度に第三次安倍政権が発足した際に打ち出した政策である一億総活躍社会により、ニッポン一億総活躍プランが生まれました。そのプランのなかの1つ「未来への投資を実施する経済対策について」が平成28年8月2日に閣議決定されています。そして、その対策の1つに含まれたのが新加算及びキャリアパス要件3の増設です。

高齢化社会に伴い、介護への社会的な需要が高まるなかで、介護職員の定着をはかり、介護職員が具体的なキャリアビジョンを持って仕事に取り組めるように打ち出されたものと考えられます。

新加算及びキャリアパス要件3増設の概要

そもそもキャリアパス要件とは、平成24年度より施行された介護職員処遇改善加算を取得するための条件のことであり、もともとは職能資格制度を定めたキャリアパス要件1と、介護士の資質向上や研修計画などを盛り込んだキャリアパス要件2で構成されていました。

今回、新たに増設されたキャリアパス要件3と追加された新加算について見てみましょう。

キャリアパス要件3とは?

キャリアパス要件3について、厚生労働省は「経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けること」と定義しています。

キャリアパス要件1、キャリアパス要件2でも昇給や賃金に対しての記載はありましたが、それら昇給や昇格を判定する仕組みには明確な基準がないため、一般職員が班長や主任に昇格するためには何をどうすればいいかについては判然としませんでした。そのため、同じ能力を持ったスタッフが、A事業所では主任を任されているのに対し、B事業所では一般職員として就業しているという現象も起きていたようです。

このようなことから、どの資格を保有し、どのくらいの経験やスキルがあればどの役職にまで昇格できるのかということを定めるように求めたのが今回のキャリアパス要件3となります。

新加算とは?

キャリアパス要件3がなぜ重要視されるのかといえば、それは、新加算に関わるからです。

介護の事業所では介護職員処遇改善加算というものがあり、算定条件によって加算I~加算Vにまで分類されていますが、この分類により得られる金額が変わります。

今回、新たに追加された加算Iでは、キャリアパス要件1~キャリアパス要件3のすべてを満たし、職場環境等要件を満たすことで、月額3万7千円相当の加算が受け取れます。職場環境等要件とは、賃金改善以外の処遇改善を実施することです。旧加算Iよりも1万円ほど増額しており、新加算は事業所に大きな影響をもたらすと考えられます。このため、事業所としてはキャリアパス要件3を満たして、新加算を得ることが重要な目標になります。ただし、介護予防のために実施される訪問看護 、訪問リハビリテーション、福祉用具貸与、 特定福祉用具販売、居宅療養管理指導や居宅介護支援、介護予防支援は対象外です。

新加算及びキャリアパス要件3の増設への対応における課題は?

この制度を導入することにより、事業所側にはどのような課題が生じると考えられるでしょうか。

新加算では主観的評価も含まれるため基準があいまい

新加算が求める新たな要件として、事業所は介護職員のキャリアアップのために、①経験、②資格、③評価のいずれかに応じた昇給の仕組みを設けることが必要です。①の経験や②の資格は統一がしやすいものの、③の評価では「実技試験」「人事評価」などを想定する、とされています。実技試験や人事評価は、ともに人間の主観で評価せざるを得ないため、人によって評価が変わる可能性があり、評価基準があいまいになることが問題となるかもしれません。

介護職員への周知や提出書類の作成など仕事量がかなり増える

キャリアパス要件3を受けて事業所で新たに昇給の仕組みを設けた場合、介護職員への周知が必要です。また、新加算を得るためには、キャリアパス要件について諸々の書類を記入して提出しなければなりません。これらの事務作業が増え、この作業に該当する職員の負担がかなり増えることが考えられます。

既に成功を収めている事例も

キャリアパス要件を満たすために制度や仕組みを整備して介護職員に周知し、定着させるまでの作業は容易ではないかもしれません。しかし、実際にキャリアパス制度を運用して成功を収めている事業所もでてきています。介護職員が具体的なキャリアビジョンを持って仕事に取り組めるようになり、介護職員の定着を図ることができたそうです。このように、キャリアパスの仕組みを整備して運用していく価値は十分にあると考えられます。導入するには課題や負担はありますが、介護職員処遇改善加算取得のためにも、キャリアパス要件を整備していく検討を始めてみてはいかがでしょうか?

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参考:

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