介護人材育成
ちゃんとできていますか?介護スタッフのストレス対策メンタルヘルスケア
平成27年12月改正労働安全衛生法によりストレスチェック制度が施行されてから、約1年となります。ストレスチェック制度は従業員数50人以上の事業所が対象となっているため、従業員のチェックやメンタルヘルスケアへの取り組みが後回しになっている施設があるかもしれません。ここでは安定した雇用維持・経営のために、知っておきたいメンタルヘルスケアについてご紹介いたします。
ストレスチェック制度の背景
近年、仕事で強い不安・ストレス・悩みを感じている労働者が増えています。また、年間3万人いる自殺者のうち、労働者の自殺は7000~9000人といわれています。業務による心理的負荷によって精神障害が引き起こされ、自殺に繋がった場合の労災認定が増加傾向にあります。
そこで、労働安全衛生法が改正され、「心理的な負担の程度を把握するための検査等」(ストレスチェック)の実施が、労働者数50人以上の事業所に義務付けされました。
ストレスチェック制度
ストレスチェックの検査項目は、回答者が抱えているであろうストレスの要因や度合について分析することを目的にしています。労働省がまとめた「職業性ストレス簡易調査票」にもとづいて行われます。全部で57項目あり、仕事の内容や量、現在の気分・気持ち、周囲の人について、満足度等を調べます。
介護事業所の現状
常勤の従業員が50人未満の職場はストレスチェック制度の対象外となり、努力義務となっています。しかし、職場の規模にかかわらず、従業員へのメンタルヘルスケアは社会全体の課題です。介護施設も決して例外ではありません。介護業界の精神疾患の労災申請数は急速に増加しているのです。厚生労働省によれば、「社会保険・社会福祉・介護事業」における精神疾患の労災申請は、2009年度に66人であったものが、2014年度には業種別トップの140人であったとのことです。5年間の増加率は2.1倍で、全業種の1.3倍を大きく上回っています。
介護業界では、人材不足と業務や職場環境にかかわるストレスが互いに影響しあっているため、他業界よりも精神疾患を患う数が多くなっていると考えられます。
スタッフの心身の不調の事例紹介
スタッフの不調のサインにできるだけ早く気付き、環境改善していくことが、スタッフと施設を守るためにも大切です。下記に紹介するようなスタッフの不調がおこりそうな環境があれば、改善するよう取り組んでください。
職場環境でおきるスタッフの不調の原因・きっかけの例
- 長時間労働が常習化してうつ病を発症
- 上司からの叱責がもととなり、身体症状を伴った適応障害が発症
- セクハラによるうつ病の発症
- 過重労働によるくも膜下出血、急性心不全
メンタルヘルスへの正しい理解で雇用維持と安定した経営へ
介護施設によっては、施設長本人が、過重労働に追われて心身ともに不調となるケースもあります。管理監督者としての視点、労働者としての視点の両方をもって、自分自身と職場のスタッフを同時に守っていくメンタルヘルスケアに取り組むことが大切です。
メンタルヘルスケアの重要性を理解して、スタッフの不調に気づく心と改善できる実行力がある職場は、安定した経営ができるだけでなく、利用者とその家族の安心感や信頼につながります。
改善方法がわからない場合や産業医を紹介してほしいときには、各自治体の産業保健センター・各自治体の保健所・各自治体による地域産業保健推進センターに相談するとよいでしょう。
参考: