介護業務改善
会話のキッカケにまず共感!介護利用者世代に流行ったカルチャー
核家族や三世代家族など、家計や住居をともにする「世帯」の構造・割合の現状について、毎年国民生活基礎調査が行われています。調査が始まった1976年以来、祖父母と子供夫婦、孫が同居する三世代家族は減り続け、親と子供だけ、あるいはひとり親と子供だけの核家族が増えています。家庭や地域で世代の違う人と交流する機会が少なくなっているため、スタッフのなかには「介護職につくまでは世代の違う人と話す機会がほとんどなかった」という人も珍しくなくなっています。
したがって、世代の異なる相手との会話に苦手意識をもっている介護現場のスタッフは少なくはありません。この「苦手意識」や「心の距離」は、無意識のうちに利用者とのコミュニケーション・接遇に影響を与えてしまうことがあります。
しかし、こういった世代間の苦手意識は、利用者の世代を理解・共感することで改善・克服できる可能性があります。そこで今回は、会話のきっかけが作りやすくなるように利用者世代で流行った音楽や映画、歴史的なできごとをご紹介します。
今の流行りとリンクしているものがたくさん
例えば、現在70~75歳くらいの世代の方が20代の時の1960年代カルチャーには、今も色あせない素晴らしい作品や現流行のルーツになっているものがたくさんあります。例えば、近年台頭しているEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)では当時流行ったディスコナンバーがアレンジされており、映画ではリメイクや続編が頻繁に製作・上映されています。
ファッションでもレトロポップなコーデは今でも根強い人気があり、6~7年周期でリバイバルを繰り返しています。
利用者が生きてきた時代が「大昔の話でよくわからない世界」ではないことがわかると、親近感もわくのではないでしょうか?
年代別に流行った音楽・映画・時事をご紹介
利用者の年代はさまざまです。そこで、流行を年代別に詳しく見てみましょう。各年代に生まれた方が、20~30歳くらいのときに流行った文化、できごとについて、ピックアップしました。
1920年代生まれ
戦争中に20代を過ごし、つらい経験をされた方が多いことに配慮しましょう。そのため、好きな音楽や映画は、後にご紹介する1930年代生まれと重なることが多いです。1949年に12歳でデビューした美空ひばりさんは戦後の復興を象徴する歌手で、今も幅広い世代で親しまれています。
音楽:東京ブギウギ(1948)
映画:ピノキオ(1940)、モダンタイムス(1936)
同じ世代の有名人:相田みつを、大滝秀治、安野光雅
1930年代生まれ
高度成長序盤の時期です。マリリン・モンローやエルビス・プレスリーなどのスターを通して、海外の音楽・映画に熱中した人も多いです。当時流行した音楽は、今でもよく耳にしますね。
音楽:お富さん(1954)、監獄ロック(1957)、雨に唄えば(1952)
映画:七人の侍(1954)、ゴジラ(1954)、ローマの休日(1957)
同じ世代の有名人:石原裕次郎、伊東四朗、市原悦子
1940年代生まれ
東京オリンピックが開催された時期で、カラーテレビの本放送がはじまり、プロレスや野球などのスポーツ中継に夢中になった人も多いでしょう。音楽ではビートルズが大流行しました。
音楽:ズンドコ節(1960)、三百六十五歩のマーチ(1968)、イエスタデイ(1965)
映画:007 ゴールドフィンガー(1965)、赤ひげ(1965)、ゴー!ゴー!若大将(1967)
同じ世代の有名人:石坂浩二、タモリ、加賀まりこ
世代が違っても変わらないものも
性別や家族・夫婦に関する考え方など、時代によって考え方や価値観は異なる場合もありますが、世代にかかわらず、「今」を一緒に生きていることに変わりありません。現在話題のニュースを会話のきっかけにするのもよいでしょう。
また、就学・就職・結婚などのライフイベントや初恋のドキドキなど、世代を超えた共感ポイントはたくさんあります。世代によって形は変わっても、心の奥に流れるものは共通しているのかもしれませんね。それらも会話のきっかけにできます。
共感力を高めて利用者の心をつかむ接遇を
当時流行っていたものを知ると、「それは親戚のおじさんが好きだった!」というような発見もあるでしょう。流行は繰り返すといいますが、いま流行っていることは利用者の世代にルーツがあったりもします。少しでも親近感が持てれば、心の距離はぐっと近くなります。
利用者に共感することは、より気持ちのこもった接遇やモチベーション向上につながります。また、利用者との些細な誤解や価値観の違い、世代差による抵抗も緩和されます。心のかよったコミュニケーションをとれると、利用者にとっても孤独感や疎外感がなくなり、回復への意欲向上や協調性の改善も期待できるでしょう。
参考: