介護業務改善
アサーティブな話し方、反応とは 介護で重要なアサーティブ・コミュニケーション「4つの柱」とは
アサーティブ・コミュニケーションとは、相手と自分を尊重しつつ、率直にメッセージを伝えるコミュニケーション手法です。介護現場に取り入れることで、コミュニケーションの質向上など、さまざまなメリットにつながりますが、実践するにはトレーニングが必要です。アサーティブ・コミュニケーションをよく理解し、身につけるために、そのベースとなる「4つの柱」を知っておきましょう。
アサーティブ・コミュニケーションとは? 介護現場で重要視される理由
アサーティブ・コミュニケーションは、明確なメッセージを適切に伝えることを目的に、相手を尊重しながら自分の意見や感情を表現するコミュニケーションのスタイルです。多くの人にとって、職場や学校、プライベートの場で自分と異なる考え方や立場の人と話す機会があるものです。そのような場面で相手と対立した場合でも、相手へのリスペクトを忘れず、自身の意見や要望を冷静に伝えることが大事です。
例えば、後輩に「遅れそうなときは相談して」と伝えていたにもかかわらず、頼んでいた仕事が期限通りに終わっていなかったら、どのように反応すればいいのでしょうか? こうした場面でのコミュニケーションは非常に困難です。感情的になって攻撃的な言葉で相手を責めたり、黙って自分で仕事を引き取ったり、イヤミのひとつも言ってみたり、といったことが少なからずあるかもしれません。
しかし、今後に向けてチームで前向きに取り組むためには、冷静に反応することが重要です。
それには、まず、状況や相手の言動など事実のみを客観的に描写し、感情的にならずに相手の気持ちを考えます。例えば、「相談してくれたらよかったのに、どうして何も言わなかったの?」など事実と合わせて自分の意見や気持ちを率直に伝えます。その上で、「締め切りを2日延ばせばできるかな?」など具体的な解決策を提案します。
このとき、相手の反応によって、自分が次にとるべき行動を考えておきましょう。
例えば、相手が「あと2日あればできる」という場合は、どうすれば効率的に進められるかいっしょに考える、「あと2日あってもできない」という場合は他の人に依頼するなどです。
以上がアサーティブなコミュニケーションのスタイルですが、この手法はさまざまな関係性や立場で使えます。介護現場に取り入れることで、スタッフと利用者、スタッフ間のコミュニケーションの質向上や信頼関係づくり、問題が起きた際の解決への前向きな取り組みを促します。これにより、介護の質向上とスタッフの離職の減少につながり、その結果として、スタッフのワークライフバランスも改善され、働きやすい職場環境の実現が期待できます。
介護現場でアサーティブ・コミュニケーションを実践するには
アサーティブ・コミュニケーションを実践するには、そのスタイルを身につけることが欠かせません。そのためには、長年のコミュニケーションの癖を変えるための学びと練習が必要になります。生まれつき社交的で話上手な人もいますが、社交的なことと適切に伝えるスキルは必ずしも同じではありません。
「気が短いので、ついカッとして言葉が荒くなる」「気弱なのでハッキリものが言えない」など自身のコミュニケーションに課題を感じている人もいるかもしれません。こうした問題は性格によるものではなく、スキルの不足によるものと考えましょう。
アサーティブなトレーニングを通じて、相手を尊重しながら適切な言葉で思いを伝えるスキルを身につけることが重要なのです。コミュニケーションの悩みの解決には時間がかかりますが、焦らずじっくり取り組むことが大切です。
*具体的なトレーニング法についてはこちらの記事をご覧ください。
アサーションとは? アサーティブコミュニケーションとロジカルシンキングで介護職員のスキルアップ
アサーティブ・コミュニケーションを支える4つの柱
アサーティブ・コミュニケーションの根底には「誠実」「率直」「対等」「自己責任」の考え方があります。
誠実:他者に誠実に向き合うには、まず自分に正直になりましょう
率直:あいまいな表現ではなく、明瞭な言葉で伝えます
対等:相手を見下したり、卑屈になることなく、自分と相手を平等に尊重しましょう
自己責任:自分が言ったこと・言わなかったことの責任は自分にあります
アサーティブ・コミュニケーションのトレーニングでは、これらを「4つの柱」として、しっかりと身につけることが重要です。それは、ていねいな言葉で表現するだけでなく、心の中で相手を尊重し誠実な態度で接することです。ていねいな言葉を使っていても、心の中で相手を軽んじていれば、それは自ずと伝わってしまいます。対照的に、表現があまり上手でなくても、誠実でひたむきな言葉は人の心に響きます。
アサーティブな伝え方・反応はスキルとしての要素もありますが、「4つの柱」が意識の根本にあれば、自然とアサーティブな言葉が出るようになり、相手の心を動かします。
アサーティブコミュニケーションはスキルだけでなく心の持ち方が大切
アサーティブ・コミュニケーションは、スキルを身につけることで実践できます。ただし、その前提として、自分にも他者にも、感情や意見、価値観を表現する権利があることを認識しなければなりません。それは、介護現場では、利用者とスタッフ、またスタッフどうしが、お互いの権利と価値を認めあうアサーティブな人間関係づくりの土台になります。
介護スタッフがアサーティブ・コミュニケーションの手法を身につけることでコミュニケーションの質が高まり、ホスピタリティの向上も望めます。「4本の柱」を念頭に、コミュニケーションの質の向上を目指しましょう。