介護職の給料事情はどうなっている?現状をリサーチ!

「介護職の給料は低い」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。はたして本当に、介護職の給料は低いのでしょうか。介護職の給料事情について、その現状を深堀りしていきます。

介護職の平均月収ってどのくらい?

まずは、介護職が現在どのくらいの給料を受け取っているのかについて、厚生労働省が公表する2020年度のデータから見ていきましょう。

介護職の平均月収は1年間で1万円アップ

2020年2月時点で、介護職員の平均月収は315,850円でした。2019年同月時点の月収と比較すると、15,730円上昇しています。上昇分の内訳は、基本給3,160円、手当8,090円、賞与を含む一時金4,490円です。

また、勤続年数別の平均月収は以下のとおりです。

  • 勤続年数1年:283,480円
  • 勤続年数2年:287,940円
  • 勤続年数3年:291,010円
  • 勤続年数4年:296,700円
  • 勤続年数5~9年:307,980円
  • 勤続年数10年以上:350,820円

勤続年数にかかわらず、年々月収が増えているのは紛れもない事実です。これらのことから、介護職の給料事情は月収が伸び止まったり、減ったりという最悪の状況を避けられているといえます。

介護職の保有資格別の月収比較

次に、介護職員の保有資格別で比較した平均月収を紹介します。国家資格である介護福祉士の平均月収は329,250円、実務者研修修了者レベルでは303,230円、介護職員初任者研修修了者レベルでは301,210円でした。これらの資格を持たない職員の月収は275,920円となっています。

ただし、資格の種類によって平均勤務年数は異なります。有資格者の平均勤続年数は8.2年、保有資格なしの平均勤続年数は5.5年であることから、上記の月収に到達するまでの年数が推測できるでしょう。

資格の有無にかかわらず、前年と比較して、 有資格者ならば15,670円、保有資格がなくとも11,120円の増額が見られ、介護職員全体の給与が徐々に上がっているといえるでしょう。

介護施設で働くほかの職種との月収比較

介護施設では介護職員以外にもさまざまな職員が働いています。ここでは、介護職員以外の職種の平均月収を見ていきましょう。

  • 看護職員:379,610円
  • 生活相談員・支援相談員:343,310円
  • 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士または機能訓練指導員:358,560円
  • 介護支援専門員:357,850円
  • 事務職員:311,120円
  • 調理員:267,930円
  • 管理栄養士・栄養士:319,680円

残念ながら、ほかの職種と比較すると、まだまだ介護職員の月収は低いのが現状です。

参考:

介護職は現在の賃金に対して不満を持っている?

それでは、介護職がこのような賃金の現状をどのように捉えているのかについて見ていきましょう。

現状の賃金に満足している介護職は少ない

公益財団法人介護労働安定センターが実施した「平成30年度介護労働実態調査」の回答割合を就業形態別に見ると、基本給の引き上げを希望する正規職員は67.7%、非正規職員は51.7%でした。回答者の7割近くが現状の賃金に満足していないことがわかります。

特に、事業所の規模が大きいほど賃金への不満が強い傾向にあります。一般的には、「大きな施設に勤めていれば待遇も良く、収入への不満も少ない」と考えがちですが、それも一概にはいえないようです。

また、賞与についても正規職員では約5割が引き上げを希望しています。自身の能力を給料で評価してほしいという意見も4割ほどあり、基本給や賞与については今後も改善が望まれます。

なお、賃金は介護の仕事をやめた理由にも挙がっています。介護の人手不足が叫ばれるなか、介護職の人材を確保するためには賃金に関する不満解消を視野に入れることも必要といえるでしょう。

手当については満足している介護職が多い

ただ、手当についてはおおむね満足している人が多いようです。早朝や夜勤にかかる手当や役職手当、通勤手当の増加を希望する職員は1割程度、資格手当の引き上げ希望者についても約2割となっています。

この結果から、介護職が注視しているのは、基本給と賞与などの一時金に限局されているということがうかがえます。

参考:

介護職の賃上げに関する補助金はどうなっている?

介護職の賃上げに関する補助金は、「介護職員処遇改善加算」による加算がメインとなっています。介護職員処遇改善加算を活用した介護職員への賃上げの状況と、介護職員処遇改善加算以外の補助金制度について詳しく紹介します。

介護施設の9割が介護職員処遇改善加算を活用している

2018年に「介護職員処遇改善加算」の取得状況についての調査が行われました。調査結果をみると、介護施設全体の約91%が介護職員処遇改善加算の条件を満たして補助金を取得しています。

介護施設別に見ると、もっとも取得率が高いのが認知症対応型共同生活介護で99.0%でした。以降、介護老人福祉施設98.5%、介護老人保健施設94.6%、通所介護89.6%、訪問介護88.4%と続きます。

介護施設全体の約9%は、補助金の申請に至っていません。その理由を見ると、「事務作業が煩雑」が53.2%、「利用者負担の発生」が33.1%、「対象の制約のため困難」が25.8%となっています。

補助金を活用しつつ賃上げしている、あるいは検討している施設が多い

介護処遇改善加算で得た補助金が、職員に還元されているかどうかについて見てみましょう。介護サービス施設・事業所における介護従事者等の給与等の引き上げの実施方法をみると、 「定期昇給を実施(予定)」が69.9%、「各種手当の引き上げまたは新設(予定)」が31.3%、「給与表を改定して賃金水準を引き上げ(予定)」が21.1%となっています。このことから、多くの施設が補助金を活用して職員へ還元している、あるいは還元を検討していることがわかります。特に、介護老人保健施設や介護老人福祉施設、介護療養型医療施設では、80%以上が定期昇給を実施または予定していると回答しています。今後は、これまで職員の不満のひとつであった、能力に応じた昇給が実現するかもしれません。

介護職の賃上げが今後さらに期待されている

介護職員処遇改善加算以外にも、新型コロナウイルス感染症の影響によって、今後さらに介護職員の賃上げが期待されています。2021年11月に「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」が閣議決定されました。これにもとづき、介護職員に対し、月額平均9,000円の賃金引き上げ措置を、2022年2月から実施するために必要な経費が都道府県に交付されます。対象事業所は都道府県に申請する必要がありますが、介護サービスの種類ごとに介護職員数に応じて交付率が設定されるため、施設によって交付率は異なります。もっとも交付率が高いサービス区分は、訪問介護 ・夜間対応型訪問介護 ・定期巡回や随時対応型訪問介護看護・(介護予防)認知症対応型通所介護の2.1%で、次に高い区分が(介護予防)認知症対応型共同生活介護の2.0%となっています。

参考:

賃金に不満を持つ介護職も多いが賃金は確実に上がっている!

介護業界は着実に賃金が上がってはいるものの、まだ現状の賃金に対して不満を持っている人が多いのが実情です。2018年の介護職員処遇改善加算を賃上げにつなげた施設が多いものの、まだ制度を活用できていない事業所もあります。今後も介護職の賃金は上がる可能性がありますが、賃金を理由に退職する人材も多くいるのも現状です。介護人材の確保のためには、働き方の見直しに加えて、賃金体系の見直しも必要となるでしょう。

 

参考:すべて本文中に記載

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