【2021】介護施設向けのICT導入支援補助金の種類と特徴

厚生労働省は、介護事業における職員の業務効率向上や、利用者へのサービス向上に向けてICTの導入を促進しています。ICT促進を加速させるためにはシステムや設備の導入が必要ですが、国や自治体が実施するICT導入支援補助金制度の利用が可能です。今回は2021年に実施された、介護施設向けのICT補助金の種類と特徴についてまとめました。

介護事業向けのICT補助金の概要

厚生労働省は介護現場の「ICT導入支援事業」を行っています。この制度を利用すれば、ICT化にかかる費用への補助が受けられるため、導入時の負担が軽減されます。

厚生労働省が公開する資料「介護現場における生産性向上に向けた取組」にもとづいた補助条件や施設規模ごとの補助上限額については、関連記事「コロナ禍に対応する令和3年の介護事業ICT化促進補助金制度」にて詳しく紹介しています。

2021年度版 ICT導入支援補助金制度都道府県別の例

先にもお伝えしたとおり、ICT導入支援補助金の実施主体は都道府県であり、それぞれ条件がやや異なります。2021年度に実施されていたICT関連補助金制度の例をいくつか紹介します。2021年度の申請については、いずれの自治体もすでに受付を終了しているため、次年度以降の利用を検討する際の参考としてご覧ください。

参考:介護現場におけるICT促進|厚生労働省

 

【青森県】介護ロボット及びICT導入支援事業

青森県では、移乗支援や入浴支援などの介護ロボットのほか、記録業務、情報業務などを一気通貫で実施できる介護ソフトおよびタブレット端末等の導入にかかる補助金事業を行っていました。

  • 補助率:1/2または3/4
    機器の種類ごとの上限等、詳細は以下のとおりでした。

機器類/通信環境整備

補助基準額

補助率

1施設あたり補助上限台数

移乗支援介護ロボットおよび入浴支援介護ロボットの導入

1機器あたり

2,000,000 円

2分の1

必要台数とする

1機器あたり

1,334,000 円

4分の3※

上記以外の介護ロボットの導入

1機器あたり

600,000 円

2分の1

1機器あたり

400,000 円

4分の3※

Wi-Fi環境整備するために必要な経費または職員間の情報共有などを図るためのインカム導入経費

1施設あたり

15,000,000 円

2分の1

一式

1施設あたり

10,000,000 円

4分の3※

※補助率4分の3となるのは、以下の条件を満たす場合とされていました

・少なくとも見守りセンサー、インカム・スマートフォン等のICT 機器、介護記録ソフトを活用し、従前の介護職員等の人員体制の効率化を行うことを予定していること。

・利用者のケアの質の維持・向上や職員の休憩時間の確保等の負担軽減に資する取組を行うことを予定していること

また、介護ソフト及びタブレット端末等導入経費の補助基準額については以下のとおりです。

事業所規模

補助基準額

補助率

職員1~10人

2,000,000円

2分の1

1,334,000円

4分の3※

職員11~20人

3,200,000円

2分の1

2,134,000円

4分の3※

職員21~30人

4,000,000円

2分の1

2,667,000円

4分の3※

職員31人以上

5,200,000円

2分の1

3,467,000円

4分の3※

※補助率4分の3となるのは、以下の条件を満たす場合とされていました

・LIFEにデータを提供している又は提供を予定していること

・事業所内・事業所間で居宅サービス計画書等のデータ連携を行っている又は行うことを予定していること

  • 受付期間:2021年8月26日(木)~2021年10月15日(金)必着

参考:令和3年度介護ロボット及びICT導入支援事業について|青森県社会福祉協議会ウェブサイト

 【宮城県】介護ロボット・ICT導入支援事業

宮城県では、2019年度まで実施していた「介護ロボット導入支援事業」および「ロボット等介護機器導入支援事業」を一本化し、2020年度から「介護ロボット・ICT導入支援事業」として補助金交付を行っていました。対象となるのは、介護ロボットや介護ソフトおよびタブレット端末等の導入にかかる経費です。補助率や要件は、機器の種類によって異なります。以下は、「介護記録,情報共有,請求業務まで一気通貫とするために必要なタブレット端末,介護記録ソフト等の一式を介護サービス事業所に導入する事業」の情報です。

  • 補助率:1/2または3/4
    ※条件を満たし内容が適切と認められた場合は補助率3/4となります。
    詳細は、こちらをご覧ください。

参考:令和3年度 介護ロボット・ICT導入支援事業手引き|宮城県公式ホームページ

  • 受付期間:事業公告日2021年8月27日(金)~2021年10月15日(金)必着

参考:令和3年度介護ロボット・ICT導入支援事業について|宮城県公式ウェブサイト

 

【山形県】ICT導入支援事業費補助金

山形県では、介護人材の定着、新規参入の促進に向けて、ICT導入にかかる経費の一部を補助していました。補助対象には、業務の一貫処理が可能な介護ソフトやタブレット端末等のハードウェアのほか、クラウドサービスや保守・サポート費なども該当します。すでに介護ソフトを活用して一貫した処理ができている場合は、新たにタブレット端末やバックオフィス業務用のソフトを導入することのみも対象です。ほかにも、「可能な限りタブレット端末等による音声入力機能の活用を図ること」など、いくつかの要件を満たす必要があります。

 

  • 補助率:1/2もしくは、関連記事に記載された職員数別の補助基準額と比較していずれか少ない額。上限の記載はありません。

詳細については、以下をご確認ください。
参考:令和3年度山形県ICT導入支援事業費補助金交付要綱

  • 受付期間:ホームページ公告更新日 2021年8月31日(火)~2021年10月1日(金)

参考:令和3年度山形県ICT導入支援事業費補助金について|山形県公式ページ

 

【東京都】介護現場改革促進等事業 デジタル機器導入促進支援

東京都では、介護業務の負担軽減に資する機能を持つ業務支援システムの導入にあたり、経費の一部を補助していました。補助対象となるのは、介護ソフトやタブレット端末等ハードウェアの導入費用、また、クラウドサービスのリース利用料などです。

 

  • 補助率:最大3/4(事業所規模に応じて最大260万円)

補助基準額等、詳細については以下をご確認ください。

参考:令和3年度介護現場改革促進事業補助金交付要綱|東京都福祉保健局

  • 受付期間:~2021年10月8日(金)必着

参考:介護保険施設などにおけるデジタル環境整備促進事業|東京都福祉保健局

 

【静岡県】介護分野ICT化等事業費補助金

静岡県では、ICT導入支援事業だけでなく、介護ロボット導入支援、通信環境整備導入促進事業をまとめて「介護分野ICT化等事業費補助金」として経費の一部を補助していたました。このうち、「ICT導入支援事業」の対象となったのは、介護ソフトやタブレット端末等の導入、クラウドサービス利用や保守・サポートなどにかかる経費です。

 

  • ICT導入支援事業の補助率:1/2もしくは、関連記事に記載された職員数別の補助基準額と比較していずれか少ない額。

機器ごとの補助基準額や上限については以下をご確認ください。

参考:介護分野ICT化等事業費補助金交付要綱|静岡県公式ホームページ

  • 受付期間:2021年9月22日(水)~2021年10月15日(金)

参考:介護分野ICT化等事業費補助金トップページ|静岡県公式ホームページ

 

 

【広島県】介護事業所ICT導入支援事業

一般社団法人日本福祉用具供給協会中国支部広島県ブロックは、広島県からの補助金を受け、介護現場の生産性向上を目的とした補助金事業を行っていました。対象となるのは、介護ソフトやタブレット端末等のICT機器の購入やリースなどに関する経費です。以下に示すように、事業所の体制によっても補助率が変わります。

・  LIFEにデータ提供している(予定を含む)

・  事業所内・事業所間でデータ連携を実施している(予定を含む)
なお上限等の詳細については、以下をご確認ください。

参考:介護事業所ICT導入支援事業実施要領|広島市公式ホームページ

  • 受付期間:2021年(令和3年)5月 24日(月)〜2021年11月30日(月)必着

※2021年の予算限度額に到達したため、受付は終了しています(2021年11月15日時点)

参考:介護事業所ICT導入支援事業|広島市公式ホームページ

 

【大分県】ICT導入に係る補助

大分県では、ICTの導入が業務効率化、生産性向上に有効として、導入支援となる補助金事業を行っていました。補助対象は、介護ソフトやタブレット端末等のハードウェア、クラウドサービス利用や保守・サポートなどにかかる経費です。

  • 補助率:1/2もしくは、関連記事に記載された職員数別の補助基準額と比較していずれか少ない額。

※  1申請者あたりの年間補助上限800万円

詳細については、以下の参考サイトをご確認ください。

  • 受付期間:~2021年9月30日(木)

参考:ICT導入に係る補助(令和3年度)|大分県ホームページ

 

代表的な介護施設向けのICT機器・ソフトウェアの活用例

介護施設で活用できるICT機器や設備はさまざまあり、用途や目的ごとに活用法が異なります。補助金の対象となるICT機器や、サービス活用例の一部を挙げ、その成果を紹介します。

介護ソフト

介護現場の業務効率化を考えるうえで、事務的作業の軽減は大きな課題のひとつです。利用者の記録やケアプランの作成といった日常業務のほか、介護保険請求などの基幹業務、シフト管理や職員の給与手続きといった労務管理において、介護ソフトの活用が注目されています。上掲の厚生労働省資料で公表されている「ICT導入支援事業導入効果報告の分析(令和元年度)」でも、2019年度に全導入製品中でもっとも導入の割合が高かったのが介護ソフトでした。

具体的な活用例として、厚生労働省の「居宅サービス事業所におけるICT 機器・ソフトウェア導入に関する手引きVer.1.1」に記載された事例を見てみましょう。A法人は、訪問介護事業においてQRコードシステムを導入し、報酬請求業務の簡素化を進めました。アセスメント活動量の増加のほか、事務作業の軽減に伴う残業時間の減少が顕著になったとされています。あくまで一例ではありますが、介護ソフトの活用は業務効率化に大きく貢献することがわかります。

 

タブレット・スマートフォン

介護ソフトをより有効活用する際に役立つのが、タブレットやスマートフォンなどの携帯機器です。クラウドサービスを活用することで、場所や時間を問わず記録や確認などの作業ができ、複数人での情報共有が可能です。先に紹介した厚生労働省の手引きには、タブレット活用の事例も紹介されています。

B法人は、サービス提供記録と介護報酬請求が連動するタブレットを導入して効率化を進めました。報酬請求業務の短縮のほか、申し送りの効率化や情報共有による訪問指示内容の伝達もれの減少という成果を上げています。記録業務にかかる時間が導入初期と比べて1カ月あたり1.2時間、報酬請求業務にかかる時間は1カ月あたり約8時間30分も削減できたと報告されています。

 

インカム

インカムは、スタッフ間の通話手段として利用され、離れた場所からでもスムーズなコミュニケーションを可能にするツールです。ICTのCは「コミュニケーション(Communication)」を指しますが、介護現場における相互連絡はトラブルや事故を避けるために大きな役割を果たします。

全国社会福祉法人経営者協議会が公開する「福祉分野における ICT化の現状と可能性(2020年3月)」によると、特別養護老人ホームや老人保健施設を含む介護施設を展開する法人において、「骨伝導ワイヤレスインカム」を導入した事例が検証されています。職員一人ひとりにiPhoneとインカムを配布し、タイムリーな情報共有を行うことでサービスの質向上につなげている事例です。

 

ICT導入支援補助金を活用して業務効率化を

人材不足が続く介護現場では、業務効率や生産性の向上は急務となる課題です。しかし、ICT化を進めるには費用が必要であり、環境整備にも手間がかかります。そうした負担をできるだけ軽減するためにも、補助金制度を上手に活用しましょう。業務効率化が進めば、利用者への対応に余裕が生まれ、サービスの質向上につながります。事業所側、利用者側双方にメリットがあるICT化を検討してみてはいかがでしょうか。

 

参考:すべて本文中に記載

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