介護ニュース
介護施設がクラウドファンディングを行う流れと取り組みの例
近年、資金調達の方法として注目されているクラウドファンディングは、介護業界にも浸透しつつあります。介護・福祉業界のケアワーカーへ体や心をいやす商品を贈ったり、建物の増改築をしたりするための資金調達に、クラウドファンディングが利用されています。今回は、介護施設でのクラウドファンディングの取り組みについて紹介します。
介護施設のクラウドファンディングへの取り組み例
実際に介護施設で行われたクラウドファンディングの事例を紹介しましょう。
事例:ペットと暮らせる特別養護老人ホームにおける、ペットの医療費の調達に
「ペットと暮らすことができる」ことが特徴の特別養護老人ホームでの取り組みです。ペットと同居可能な施設は、入居者の精神面の安定につながる、施設入居に伴いペットを殺処分せずにすむというメリットがあります。一方で、ペットの世話に多くのコストがかかるという現実がありました。
そこで、ペットの医療費の支援をクラウドファンディングで募ったところ、目標額を大幅に超えた資金調達に成功したのです。この事例は寄付型のクラウドファンディングで行われ、リターンは、お礼のメッセージ、メールマガジンの毎月送付、飼われているペットの写真データを毎月送付、ホームページに名前記載という内容になっています。
事例:有料老人ホームの住居ドアを、入居者それぞれの住んでいた家のドアと同じ仕様に
住み慣れない有料老人ホームで生活を送ることの不安を解消するために、また入居者が自分の部屋を間違えてしまうのを防ぐために考え出されたプロジェクトです。具体的には、入居者が以前住んでいた家の玄関を写真に撮り、それを元にイングジェットシートでコピー写真を作成して、老人ホームの各部屋のドアに貼るというサービスです。
そのための費用をクラウドファンディングで募ったところ、目標額を超える資金調達に成功しました。こちらも寄付型のクラウドファンディングで行われ、リターンは、施行するまでのストーリーレポートを届ける、オンラインサロンの割引、セミナー講演などの内容となっています。
クラウドファンディングの仕組み
クラウド (Crowd)は「人々、一般群衆」、ファンディング (Funding)は「資金調達」という意味を持ちます。クラウドファンディングは、これらを組み合わせた造語であり、個人や企業がインターネットを介してアイデアやプロジェクトを紹介し、それに賛同する一般の人から資金を集める仕組みです。
従来は、新しい事業に必要な資金調達には、金融機関に融資を依頼するか、企業であれば株式を発行するといった方法がとられていました。しかし、従来の方法では、融資の審査や株式発行の手続きに時間がかかったり、事業の規模によっては多くの資金を調達できなかったりする問題が生じていました。場合によっては、資金調達を断念せざるをえないこともあったのです。
一方、クラウドファンディングは、従来の方法にはない手軽さがあります。プロジェクトに共感が得られれば、だれでも資金を集めることができ、多くの賛同者がいれば、それだけ多くの金額を調達することが可能です。
クラウドファンディングは、SNSによる拡散性も高く、事前にテストマーケティングにも利用できることからも近年注目されており、介護業界でも採用され始めています。
クラウドファンディングの種類
クラウドファンディングは、支援者が商品やサービスなどの特典を受けることができる「非投資型」と、金銭的なリターンを受けることができる「投資型」の2タイプに大別されます。
非投資型はさらに「寄付型」「購入型」「ふるさと納税型」に、投資型は「融資型(ソーシャルレンディング)」「ファンド投資型」「株式投資型」に分類されます。
以下、それぞれの特徴について見ていきましょう。
非投資型
- 寄付型
寄付型のクラウドファンディングは、支援者からの支援を「寄付金」として受け取る方式です。そのため、支援者には支援金に対するお返し(リターン)は基本的に発生せず、商品やサービスが提供されることはありません。
主に被災地の支援や、環境・社会問題への取り組みといった公益活動のプロジェクトが多いのが特徴です。
また、寄付型によって集められた支援金は、寄付金とされているため、課税されないというメリットがあります。 - 購入型
購入型のクラウドファンディングは、支援者が、支援した金額に相当する商品やサービスをリターンとして受け取る方式です。
例えば、新規店舗をオープンするための購入型クラウドファンディングを募る場合、支援者に対して、新店舗の商品やサービス券などをリターンとして提供するかたちになります。ただし、リターンはあくまでも商品やサービスであって、金銭を提供することはできません。 - ふるさと納税型
ふるさと納税型のクラウドファンディングは、各市町村が解決したい問題をプロジェクト化して支援を求め、ふるさと納税というかたちで寄付金を募集する方式です。支援金は自治体単位で集められ、自治体から支援対象のプロジェクトへ資金が提供されます。支援者は、ふるさと納税の返礼品をリターンとして受け取れ、寄付金の控除が受けられます。 - 融資型
融資型のクラウドファンディングは、融資を受けたい会社と融資したい複数の個人をマッチングする方式です。インターネット上で融資したい個人を募り、目標の金額に達したら特定の企業に融資をするという仕組みです。
融資する側は、少額で投資を始めることができ、低リスクでリターンが受けられるのがメリットです。基本的には応募の時点で利率が決まっており、毎月金利が支払われるシステムで運用されています。 - ファンド投資型
ファンド投資型のクラウドファンディングは、プロジェクトの発案者がインターネット上で出資を募る方式で、事業の成果によって支援者の分配金が変動します。
元本+利息でリターンを提供する融資型に対し、ファンド投資型は事業の成果によってリターンの金額が変動します。ファンド投資型では、リターンが金銭ではなく、その事業で生産された商品やサービスになることもあります。 - 株式投資型
株式投資型のクラウドファンディングは、非上場の株式を発行し、インターネットを通じて多くの人から少額ずつ資金を調達する方式です。主に、成長初期段階にあるベンチャー企業の資金調達手段として利用されており、プロジェクトの発案者は株式会社となります。資金調達の規模は大きく、事業内容が魅力的であれば、調達側は短期間で資金を調達できる可能性もあります。
投資型
クラウドファンディングの流れ
クラウドファンディングで資金調達を行う流れは、大きく分けて以下の2パターンがあります。それぞれの特徴について見ていきましょう。
専用ページを作成して支援を募る
クラウドファンディングサイトのサービスを利用せずに、自ら支援を募るWebページを作成する方法です。多くの手間をかけずに今すぐに始めることができます。
自分でWebページを作成するのは難易度が高そうに見えますが、最近では簡単に支援専用ページを作成できるサービスもありますので検討してみるのもよいでしょう。
細かい手順や手間を省くことができ、コストも抑えられるのがメリットです。しかし、情報を拡散したり、広告を提示したりする広報活動を自分で行わなければなりません。
プラットフォームを利用する
クラウドファンディングを扱っているサービスのプラットフォームを利用する方法で、多くの人が実践しています。
専用プラットフォームは、なんらかの企画を支援したいと考えている人が閲覧するため、認知されやすく、支援者も集めやすいというメリットがあります。また、ほとんどのサービスが、利用者へのサポートを行っているので、クラウドファンディングに慣れていない人にとっては心強いでしょう。
デメリットとしては、一定のサービス手数料がかかることや、打ち合わせや審査などに時間と手間がかかることが挙げられます。
資金不足であきらめないクラウドファンディングという選択肢
クラウドファンディングは、プロジェクトに共感してくれる支援者から資金を調達できる仕組みです。紹介してきたように、介護業界でも、資金不足で断念していた自分の思いをかなえる事例が増えています。資金調達を成功させるためには、発案者自らがプロジェクトを発信し続けること、共感してもらえるように支援者に必要な情報を伝えることが大切です。以前に資金が足りずにあきらめてしまった企画案があれば、この機会にクラウドファンディングで実現させてみてはいかがでしょうか。
参考: