介護ニュース
どうなる?2021年度介護報酬改正・制度の安定性
2021年度の介護報酬の改定では、「感染症や災害への対応強化」が筆頭に挙げられています。感染症や災害が発生しても、利用者に必要なサービスが安定的なおかつ継続的に提供される体制を構築するための取り組みを推進しています。
団塊の世代が75歳以上となる2025年から、日本の高齢者数がピークを迎える2040年を見据えた「介護人材の確保」、健康な高齢者を多くつくるための「地域包括ケアシステムの推進」、「自立支援・重度化防止の取り組みの推進」が続いて掲げられています。また、「介護現場の革新」、「制度の安定性・持続可能性の確保」を目玉に、改定率が全体で+0.7%に設定されています。
今回は、制度の安定性に焦点を当てて解説します。
「制度の安定性・持続可能性の確保」のポイント
制度の安定性、持続可能性の確保に関しては、さまざまな項目に対して見直しや新設、廃止など細かく検討が加えられ、実状への適合と、不公平感、グレーゾーンへの改良が試みられています。以下に、改変アクション別にまとめて紹介しましょう。
見直し
- 通所、多機能系サービスの同一建物現在適用時などの区分支給限度基準額の計算方法評価
- 夜間対応型訪問介護の報酬、訪問看護のリハビリテーションの評価、提供回数など
- 居宅療養管理指導の居住場所に応じた評価
- 介護療養型医療施設の基本報酬
新設
介護予防訪問および通所リハビリテーションの長期利用の場合の評価(減算)
廃止
取得率が低く上位区分の算定がすすんでいるため、介護職員処遇改善加算(IV)(V)の廃止
検証
生活援助の訪問回数が多い利用者のケアプランの検証。最終的には保険者(市区町村)が加わった会議、地域ケア会議などでケアプランの検証を行い、利用者の自立支援の観点からのサービス内容の是正を促すものとなる。
確保
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などにおける適正なサービス提供の確保を目的とする。事業所指定の際の条件付け、家賃、ケアプランなどの確認を通じ、サ高住利用の入居者が介護保険を利用して自立支援に向けて生活ができているかについて、自治体による指導の徹底をはかる。
社会問題に配慮?今回の改定における検証・確保
これまで、訪問介護などにおいて居宅介護(ケアマネージャー)が、利用者の希望にこたえるかたちで月に100回以上といった過剰なサービス回数を設定することが問題視されていました。生活援助の訪問回数が多い利用者のケアプランの検証は、介護保険制度においては自立支援が基本的な考え方であって、ヘルパーは家政婦ではないことを示す意味があります。過度なサービス提供への警鐘を鳴らす意味においても、今回の改定ではケアマネージャーのケアプランのチェックの強化を、保険者である市区町村の行政によるチェックの厳格化によって検証をはかることになりました。
また、サ高住などにおける適正なサービス提供の確保が盛り込まれた背景にあるのは、一部の介護事業者による囲い込みへの対応とも考えられます。囲い込みとは、サ高住の家賃を低く設定して、特養に入れない(順番待ちも含める)要介護者を入居させ、併設や系列の介護事業所のサービスを利用させることで売り上げを伸ばす経営方法です。独居の高齢者が多く、その結果、サ高住での看取りが20%を超えるという現実も報告されており、その実態を把握し是正することを目的に、本来は管轄外の厚生労働省が実態の調査と改善に乗り出したとみられます。
今回の改定における制度の安定性の意味とは?
今回の改定では、地域ケア会議と連動したいわば「ご近所さんの元気な高齢者を地域みんなで守っていこう」というフレイル防止=健康年齢の維持、伸長のための自立支援へ重点を置く施策が目玉のひとつです。しかし、制度の安定性に関して、介護保険制度による公的サービスの浸透をすすめてきた過程で、ふくらんでしまった無駄な部分や過剰なサービスが削られるという厳しい面もあります。20年を経過した介護保険制度が、浸透期から熟成期に入ったという見方もあるでしょう。今後激増する後期高齢者を介護難民化させないために、介護保険制度の健全で確固たる存続、安定をはかっていくことは重要な指針といえるでしょう。
参考: