介護ニュース
介護の文書負担軽減をめぐる動きを知ろう
人手不足に悩む介護業界で問題となっているのが、各種書類を扱う介護スタッフの負担です。現在、介護に関係する文書は、自治体ごとに様式が異なり、押印必須の書類も多いことから、文書を扱う介護スタッフの負担となっています。そこで国は、介護分野の文書における負担軽減について検討するための専門委員会を立ち上げました。介護分野の文書負担軽減をめぐる現状や動きについて詳しく解説します。
介護の文書負担をめぐる状況
介護サービス事業者が作成する書類には、行政が求める文書と事業所が独自に作成・保管する文書があります。このうち、行政が求める文書では、地方自治体ごとに様式や必要となる添付書類が異なります。特に添付書類は押印の必要な書類が多いこともあり、ICT化が進まない原因のひとつとなっているのです。
介護現場では、記録などの文書作成をするために残業せざるをえない状況に陥っています。全国労働組合総連合が行った「介護労働実態調査」によると、時間外労働の約7割が「情報収集・記録」によるものでした。ほかの残業理由に比べても圧倒的に多く、介護スタッフにとって文書作成が多大な負担となっている現状が浮きぼりとなっています。
文書負担軽減に関する国の動き
国は、行政が求める文書と事業所が独自に作成・保管する文書のそれぞれについて、2017年度から文書量削減の取り組みを始めています。詳しく見ていきましょう。
行政が求める文書について
行政が求める文書のうち指定申請文書と指導監査関連文書については、国が2017年度までに実態把握などを行いました。2018年10月からは、指定申請文書の提出項目の一部削除や様式例の変更・周知などが実施されています。2019年8月には「介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」が社会保障審議会介護保険部会の下に設置されました。
事業所が独自に作成・保管する文書について
ケア記録など、事業所が独自に作成・保管する文書については、2017年度までに事業所における実態調査が行われました。2018年度には、作成文書の見直しやICT化などによる業務改善を後押しするため、生産性向上ガイドラインが作成されました。また、介護現場革新会議にて関係団体と協議し、文書量半減の取り組みについての基本方針を策定しています。
2019年度には、生産性向上ガイドラインの改定を行う予定です。Webを活用したデジタルツールの作成や生産性向上協議会の開催も計画されています。また、自治体や関係団体と協力してのパイロット事業の実施、地域医療介護総合確保基金を利用したICT導入支援を行う予定となっています。
専門委員会で今後検討される文書負担軽減策
前述の「介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」では、国と地方自治体、介護サービス事業者の間でやりとりされる文書を対象に、文書量半減に向けた対策を検討しています。2019年末までには、「様式および添付書類の標準化・簡素化」と「web入力・電子申請の導入検討」について検討した内容の中間とりまとめが介護保険部会に報告される予定です。
様式および添付書類の標準化・簡素化
介護分野の文書の様式や添付書類は、自治体独自のローカルルールが存在しており、様式が一本化されていません。しかし、指定申請に関わる提出項目は、省令に定められていることもあり、大きな違いはないのです。また、更新や変更手続きにおいても、自治体が求める項目や事象にばらつきがあり、事業者と自治体の双方に大きな負担が発生しています。そこで、専門委員会では文書や添付書類については標準化を、更新や変更の手続きについては届出手続の簡素化が検討内容として挙がっています。老人福祉法上の届出と重複している文書についても、検討される予定です。
Web入力・電子申請の導入検討
介護に関わる文書については、原則窓口にて自治体に提出することになっています。事業所は文書を作成せねばならないだけでなく、窓口に出向く必要があり、大きな負担を強いられています。自治体では、文書の保管場所を確保し、提出された書類をシステムに入力する作業も行っています。
これらの手間を省くため、Web入力や電子申請の導入が検討されています。また、多くの書類で押印が必要となっていることから、押印そのものの是非についても検討される予定です。
介護の文書負担軽減をめぐる動向から目が離せない
介護分野の文書に関わる負担軽減に関する専門委員会は、まだ設置されたばかり。協議はこれからですが、介護の文書負担軽減が、今後ぐっと進むことは間違いありません。専門委員会や国がどう動くか、文書負担軽減をめぐる今後の動向から目を離さないようにしましょう。
参考: