介護業務改善
介護施設でも「事業継続計画(BCP)」を策定して非常事態に備えよ
2018年は台風や地震による災害が相次ぎ、各地で甚大な被害をもたらしました。天災や災害では、介護施設が被災することも珍しいことではありません。そこで、近年注目されているのが事業継続計画(BCP)です。事業継続計画(BCP)は、災害などの非常事態においても介護サービスを途切れることなく提供するために必要なものです。今回は、介護施設における事業継続計画(BCP)について解説します。
事業継続計画(BCP)の現状とは
日本は自然災害が多い国といわれています。特に、2018年は大規模災害が日本各地を襲った年でもありました。災害が起こったとき、介護施設において長い期間業務が停止してしまうと、社会に大きな影響を与えます。2011年の東日本大震災では52の介護関連施設が被災し、なかには業務を停止せざるを得ない施設もありました。東日本大震災をきっかけに、事業継続計画(BCP)の必要性が広く認識され始めたのです。
ところが、2018年の帝国データバンクが行った事業継続計画(BCP)の意識調査では、事業継続計画(BCP)の策定をしている企業はわずか14.7%、介護を含むサービス業でも18.1%となっており、事業継続計画(BCP)の策定が進んでいない現状が浮き彫りとなりました。事業継続計画(BCP)の策定が進まない背景には、企業が策定に必要なスキルやノウハウを持っていなかったり、策定するための人材が確保できなかったりしていることがわかっています。
一方、事業継続計画(BCP)を導入している企業は、その効果を実感しています。前述の調査によると、事業継続計画(BCP)の策定により業務改善が進んだとの声が多く上がっています。また、社員の意識向上などに良い効果があったことを指摘する声もあります。
今後は、事業継続計画(BCP)の策定によるメリットを認知させるとともに、策定に必要なスキルやノウハウの普及、策定するための人材を育成することが重要な課題となることでしょう。
事業継続計画(BCP)を巡る国や自治体の対策を知ろう
日本では、2004年に発生した中越地震により一部の企業でBCPへの関心が高くなり、それをきっかけに初めて2005年8月に事業継続ガイドラインが策定されました。2009年11月にはガイドラインの実用性向上を目的とした改正が行われ、2013年8月にもさらに改定され、現在に至ります。
各自治体でも事業継続計画(BCP)の策定を行っており、2017年度に行われた調査では全国で約64%の自治体が策定済みとなっています。また、自治体では作成のための支援ツールや手引きなどを用意することで、民間企業にも事業継続計画(BCP)の策定が広まるよう普及に努めています。
高知県では、社会福祉施設向けの防災対策指針を作成し、南海地震が起きた場合に被害が最小限にとどまるよう、各施設に防災対策マニュアルの改定を訴えています。「高知県社会福祉防災対策指針」では、地震防災対策と風水害対策の2つに分けて詳細かつわかりやすく説明されており、各施設が事業継続計画(BCP)を策定しやすいような工夫がちりばめられています。
事業継続計画(BCP)について介護施設がすべきこと
自然災害による介護施設への大きな被害は、過去に何度も起こっています。2009年には山口県の特別養護老人ホームが土砂崩れに巻き込まれ7名が亡くなっており、2016年にも台風による水害で岩手県のグループホームにおいて9名の尊い命が失われました。このような状況を繰り返さないためにも、事業継続計画(BCP)を策定していない介護施設は、すみやかに導入の検討を始めましょう。
福祉施設における事業継続計画(BCP)策定には、次の3つのポイントがあります。
不足する経営資源を補うための取り組み
非常時に事業を継続したり、早期普及する際に不足すると考えられる人材や設備などの資源において、代替案を具体的に検討したりする。
意思決定と情報伝達の仕組みづくり
利用者と職員の安全確保や事業の継続のために必要な情報収集や意思決定の仕組みについて、対策本部の設置や役割分担、安否確認の方法などを事前に検討する。
被害を予防・軽減するための取り組み
緊急事態発生時に被害を最小限に抑えるため、今からできる対策について検討する。
事業継続計画(BCP)は策定した後も定期的に見直す機会を作り、いざというときに機能するようにしておく必要があります。具体的には、定期的に避難訓練を行うなどして計画に不備がないかを点検し、その都度見直すようにしましょう。
事業継続計画(BCP)は常に最新の状態にしておくことが大切
日常生活において支援が必要な人が多数利用している介護施設では、事業継続計画(BCP)を策定し非常事態に備えることは大変重要なことです。まだ事業継続計画(BCP)を策定していない施設があれば、すみやかに立案を開始し、対策や方針を決めていきましょう。また、策定した後はそのままにせず、定期的に訓練を行うなどして計画を見直し、常に最新の状態にしておくことが大切です。
参考: