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終末期医療で注目されるアドバンス・ケア・プランニング(ACP)
2017年8月から定期的に開催されている「人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会」では、2009年に作成したガイドラインを見直しすることが決定しました。そこで注目されているのが、「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」の概念です。しかし、このアドバンス・ケア・プランニング(ACP)という言葉を初めて聞いたという人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の概要とACPを巡る国の動きを解説します。
アドバンス・ケア・プランニング(ACP)とは?
アドバンス・ケア・プランニングとは、人生の最終段階における医療やケアについて、事前に関係者を含めて話し合い、その結果を共有することです。英語表記の頭文字をとってACPともいわれています。ACPは1995年ごろに生まれた言葉で、1980年代から欧米で推進されてきたアドバンス・ディレクティブ(AD)に代わる終末期医療における患者さんの意思表示の方法として広まってきました。
アドバンス・ケア・プランニング(ACP)では、将来自分で意思決定ができなくなったときに備えて、個々の治療方針や医療に関する意向だけでなく、自分の価値観や人生の目標なども家族などの信頼できる人々や医療関係者と話し合います。
アドバンス・ケア・プランニング(ACP)を行うことで、もしもの事態に陥り意思疎通ができなくなっても、自分の希望に沿った医療やケアを受けることが可能になります。そのため、本人や家族の満足度も高くなり、家族の心理的負担も減らせることがわかっています。
ただし、治療が不可能な化学療法中のがん患者のうち70~80%の人は治癒が不可能であることを理解していないといわれており、病状によっては本人の望む医療やケアを受けられない可能性もあります。また、望む治療を受けても思ったような効果が得られない場合があることも、患者さんやその家族は考えておかなければなりません。
アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の現状
アドバンス・ケア・プランニング(ACP)への取り組みは始まったばかりであるため、まだまだ認知度が低いといえます。2017年度に厚生労働省が行った「人生の最終段階における医療に関する意識調査」によると、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)を知っていると答えた人は、一般国民ではわずか3.3%でした。医療介護従事者では、医師が22.4%、看護師が19.7%、介護職員が7.6%と、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)に関わる職種であっても認知が進んでいません。
しかし、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)について説明したうえで賛否を問うと、一般国民は64.9%、医師は75.9%、看護師は76.7%、そして介護職員は80.1%と多くの人が賛成しています。このことから、まずはアドバンス・ケア・プランニング(ACP)の認知を広めることが急務といえるでしょう。
アドバンス・ケア・プランニング(ACP)を巡る国の動き
政府は、国民が人生の最終段階における医療についての意思決定を支援するために、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)を広めることが必要であると判断し、現在普及に努めています。
まず、2014年度と2015年度にはモデル事業として研修を実施しました。この研修では、終末期医療に関する意思決定に携わっている医師を含んだ多職種チームを対象としています。2014年度には10か所で24名、2015年度には5か所で25名が研修を受講しました。2016年度には全国8ブロックでの開催となり、214チーム751名が研修を受講しました。この年からは、人材育成や研修会の拡充などのために講師人材の育成も始まりました。2016年度には84名、2017年度には62名の講師人材を育成しており、今後もその数は増えることが予想されます。
一般国民向けには、2017年度から住民への普及啓発活動が行われています。2017年度に行われた市民講座には、129名の国民が参加する結果となりました。さらに、2018年11月には愛称を「人生会議」と決定し、ポスターやリーフレット、ホームページなどで普及の一役を担っています。
アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の浸透に期待
アドバンス・ケア・プランニング(ACP)は、内容を知れば多くの人がその必要性を十分に理解することができます。ところが、一般市民だけでなく、医療関係者や介護職などの終末期に関わる専門職にも認知度が低いのが現状です。そこで、国の整備事業として2018年度においても全国12か所で相談員研修会が実施され、97名の講師人材も育成されています。今後は、ACPの普及が加速していくことが期待できるでしょう。
参考: