介護業務改善
健康寿命の最新データから読み解く介護のヒント
「健康寿命」とは、介護などの必要がなく元気に日常生活を送れる年齢期間を示すもので、生活の質が重視されるようになっている昨今、注目されています。
2018年3月に、厚生労働省は2016年の健康寿命の推定値を発表しました。それによると、健康寿命の全国平均値は男性が72.14歳、女性が74.79歳で、2013年調査時より男性は0.95歳、女性は0.58歳延びています。また、都道府県別では、男性は山梨県の73.21歳、女性は愛知県76.32歳がそれぞれ1位となっています。
今回はこのデータをもとに、自立支援を目指す介護を実現するためのヒントを探ります。
平均寿命と健康寿命の差は?
厚生労働省が発表した「平成28年簡易生命表」によると、日本人の平均寿命は男性が80.98歳、女性が87.14歳と前年を上回ってきています。平均寿命と健康寿命を比較すると、男性には約9年、女性には約12年の差があり、その期間に介護が必要になるというわけです。そして、健康寿命をいかに平均寿命に近づけていくかが、介護事業者の社会的使命だといえるでしょう。
山梨と静岡の健康寿命が高い理由は?
それでは、都道府県別の健康寿命の傾向を見てみましょう。
2010年、2013年、2016年の3回の健康寿命調査結果で平均値が1位の山梨県の担当者は、その理由をがん検診の受診率の高さに加え、山梨県周辺の生活風習である「無尽(むじん)」の存在を挙げています。無尽は地域ごとにお金を出し合い、旅行や飲食会を開催する集いのことで、高齢者のネットワークとして日常生活での孤立を防ぐとともに生きがいにもなり、健康寿命に好影響を与えているのではないかと分析しています。また、3回の調査結果の平均値が男性3位、女性2位の静岡県では、温暖な気候と特産品の緑茶の摂取量の高さが指摘されています。
なぜ女性が長生きなのか?
このような数字を読み解くなかで気になるのは、女性が男性より長生きをしているというデータです。平均寿命では約6歳の差があります。その理由を以下で確認してみましょう。また、女性に比べ短命な男性は、どのような生活を心がけるといいのかについても付記しています。
- ホルモンの効果
女性特有のホルモン「エストロゲン」には、血圧を下げる、悪玉コレステロールの血中の濃度を下げるといった働きがあり、これが女性の長寿に貢献しています。また、動脈硬化を抑える作用がある「アディポネクチン」というホルモンの数値が、男性よりも女性のほうが高いそうです。
男性は痩せすぎや太りすぎを解消し、適切な体重管理をすることでアディポネクチンの分泌を増やすことができます。 - 基礎代謝が低い
女性は基礎代謝(人間に必要な基礎的なエネルギー)が男性に比べて低く、男性よりも少ないエネルギーで生きていけます。そのため環境に順応しやすく、長寿にもつながるといわれています。また、基礎代謝量が少ないと、老化につながる活性酸素ができにくくなる点も、長寿に関連があるといわれます。
男性は活性酸素の発生を促す激しい運動や、喫煙、紫外線をできるだけ避けるようにしましょう。 - 自分の健康状態をよく気にかける
女性は月経や出産などで自分の健康を気遣う機会が多く、医療機関で受診する頻度が高いそうです。また、アルコールの摂取や食事といった生活習慣に気を配る傾向があることも、寿命への好影響となっている可能性があります。
男性も気軽になんでも相談できるホームドクターをつくるなど、何か気になったらすぐに受診するような、自分の健康状態を常時チェックできるような環境づくりをすることが大切。
健康寿命と女性長寿の要因を介護メニューのアイデアに生かそう
利用者の健康寿命の維持・回復するために、健康寿命の高い都道府県の生活習慣や、女性が長生きする要因を意識して指導・実践していくようなアイデアを導入してみてはいかがでしょうか。
例を挙げると、以下のようなものがあります。
- 通所介護や施設のレクリエーションのプログラムに、利用者同士のコミュニケーションを必要とするゲームなどを取り入れ、知り合いづくりや友人づくりを推進する。
- 体重を管理するために定期的な体重測定をし、その記録を利用者と介護スタッフが一緒に分析して適度な運動を日々の生活に積極的に導入する
- お茶に含まれるカテキンが血糖値を下げ、糖尿病の発症リスクを低減するという研究成果に基づき、施設でたくさんお茶を飲んでもらうようにする
ちょっとしたメニューのアレンジで実現できそうなことが多いかもしれません。
参考: