介護業務改善
管理職が現場に入ると介護スタッフの不満軽減とケアの質の向上につながる
管理職になると、デスクワークや外回りの仕事が多くなります。現場スタッフとのやりとりは、手軽にできる「書類上のみ」という人もいるのではないでしょうか。しかし、それではスタッフの離職や利用者のクレームに悩まされる可能性があります。そんな困った事態を防ぐには、管理職が定期的に現場に入るようにするのが効果的です。
管理職が現場に入ることのメリットと、現場に入る際の注意点を確認していきましょう。
現場スタッフと管理職の関わりが薄い職場の末路
管理職が抱える仕事量は膨大です。利用者の家族とのやりとり、病院や地域包括支援センターへの営業など、多岐にわたります。しかし、忙しさを理由に現場スタッフと書類上だけのやりとりをしていると、次のような問題が生じる可能性があります。
書類上の指示は表情が見えず誤解を生みやすい
書類上の指示は表情が見えないため、相手に悪印象を与える場合があります。例えば、申し訳ないと思いながら「ここを直してほしい」という指示を文字にしていたとしても、その気持ちの部分は読む人になかなか伝わらないものです。それどころか、人によっては「直せだなんて、嫌がらせに違いない」などと、ネガティブな受け取り方をする可能性があるかもしれません。
意見交換ができない
書面でのやりとりは即座に意見を返すことができないため、スタッフの不満が高まる可能性があります。それが積もり積もると、業務の手抜きや、ベテラン職員の退職のきっかけとなりかねません。そうなるとケアの質の低下を招き、利用者のクレームにつながってしまいます。
管理職が現場に入ることのメリット
管理職が積極的に現場に入ることによって、以下のようなメリットが得られます。
現場スタッフへの対応が容易になる
現場に入ると、会話のなかから現場スタッフが抱える悩みや要望などをリアルタイムに知ることができます。それらに対しスピーディーかつ的確な対応が可能になるので、スタッフの不満の解消に大きな効果があるでしょう。
手抜き防止になる
介護の仕事は「ここからここまで」といった業務量の基準を作りにくいため、業務に手抜きが生じるケースがあります。
管理職が現場に入るとほどよい緊張感を与えることができ、手抜きの防止につながるでしょう。そうなれば、利用者の満足度向上が期待できます。
より効果的なチームケアにつながる
管理職になると、カンファレンスや担当者会議に参加する機会が多くなります。日ごろから現場に入っていれば、他人の話や書類だけでは得られない情報を偏りなく集めることができ、より的確な提案が可能になります。通常はなかなか対象利用者に関わることができない他職からの質問にも、正確に答えることができるでしょう。そしてそれは、利用者にとってよりよいチームケアにつながります。
家族との連携がとりやすくなる
管理職は、利用者の家族と関わる機会が少なくありません。日ごろから管理職が現場に入っていれば、利用者の様子をより正確に把握できます。そして、家族への要望があるときに的確な説明ができるでしょう。利用者の家族と介護スタッフの速やかな連携が可能になることで、利用者はもちろんスタッフの満足度も高まるはずです。
管理職が現場に入る際の注意点
管理職が、ただ現場に入りさえすればいいというわけではありません。その効果をより高めるには、以下のような点を心がけてください。
積極的にスタッフに声をかける
現場に入ったときは、スタッフへ積極的に声をかけるようにしましょう。まずは、業務の確認やねぎらいの言葉などから始めてみてください。また、雑談で趣味の話をすると喜ばれることが多いでしょう。そうすることでしだいにスタッフが心を開いてくれて、さまざまな悩みや要望を話してくれるようになるはずです。
夜勤をする
管理職が不在の夜勤中には、さまざまな手抜きが行われていることがあります。そこで、定期的に夜勤シフトに入り、ケアの質を著しく落とすような手抜きの防止に取り組みましょう。
夜勤が2人体制であれば、大変な業務を積極的に引き受け、スタッフとの信頼関係を築いてください。ふだんはあまり交流のないスタッフであっても、心を開いてもらうきっかけになります。
ダメなところばかりを指摘するチェックマンにならない
現場に入ると、手抜きや効率の悪さを感じる場面があるかもしれません。しかし、いきなりすべてを指摘すると、スタッフが反感を抱いてしまう可能性があるので、控えたほうが賢明です。一気に改善を試みるのではなく、スタッフと話し合いながら少しずつ手直ししてください。
週に一度、半日だけでも現場に入る機会を作ろう
介護施設の管理職は、スタッフや経営者、利用者やその家族の間に立って業務をこなす必要がある大変忙しいポジションです。しかし、週に一度、半日だけでも現場に入ることで、スタッフの気持ちや意識は大きく変わります。そして、スタッフの不満軽減やケアの質の向上など、少しずつ効果が見えてくるはずです。
参考: