介護人材育成
介護予防の新キーワード「フレイル」と自立支援に向けた取り組みとは
介護予防の新たなキーワードとして注目されているのが「フレイル」という言葉です。フレイルは早期に介入すれば元の健康状態に戻る可能性が高いといわれています。しかし、フレイルの具体的な状態や対策法については、わからない人も多いのではないでしょうか。介護予防の新キーワード「フレイル」と自立支援に向けた対策法について解説します。
介護予防の新キーワード「フレイル」について知ろう
フレイルとは、加齢により筋力が衰えて疲れやすくなり、元気がなくなっている状態のことをいいます。虚弱や老衰、脆弱(ぜいじゃく)といった意味をもつ、医学用語「フレイルティ」が語源です。フレイルは、健康な状態と要介護状態の間を指しているといえるでしょう。
フレイルかどうかを判断する基準には、さまざまなものがありますが、もっとも多く採用されているのは「フリードの基準」です。
フリードの基準には以下5項目があり、3項目に当てはまるとフレイル、ひとつまたはふたつの項目に該当すると、フレイルの前段階であるプレフレイルと判断されます。
- 意図しない体重減少が年間4.5kgもしくは5%以上
- 何をするのも面倒だと週3~4日以上感じる
- 歩行速度が低下している
- 握力が低下している(利き手の握力が男性で26kg未満、女性で18kg未満)
- 身体活動量が低下している
高齢者は比較的フレイルになりやすい状況にありますが、早期に発見し対策を行えば、元気な状態に戻る可能性が高くなります。そこで国は、これまで医療で行っていたフレイル予防を、介護予防と一体的に取り組むことにしました。これにより、地域の健康格差の縮小と、国民全体の健康寿命の延伸が期待されています。
介護予防に役立つフレイル予防の自立支援に向けた3大プログラム
フレイル予防には、自立支援に向けた3つのプログラムがあり、これらのプログラムに取り組むと、早い段階でフレイルの状態から脱することができるといわれています。
3つのプログラム、「運動」「社会参加」「栄養(食・口腔)」について、詳しく見てきましょう。
「運動」
フレイルを予防するためには、定期的な運動で今の筋肉量を維持しておく必要があります。しかし、無理をしてしまうと、体調を崩し、けがをすることもあり、逆効果となることも。それぞれの人に合わせた運動をすることが大切です。介護施設では、元気な人を対象とした体操教室を定期的に開催してフレイル予防を行っているところもあります。
「社会参加」
フレイルの入り口は、社会とのつながりがなくなってしまうことだといわれています。人と会うのが億劫(おっくう)になったことをきっかけに、閉じこもりがちになってしまう高齢者もいます。外に出かけるきっかけがないという人もいるでしょう。介護施設のなかには、元気な人を対象とした健康教室やカラオケ大会などを開催しているところもあります。フレイルを予防するためには、社会参加の場を提供する施設が今後ますます必要といえるでしょう。
「栄養(食・口腔)」
フレイル予防でもっとも多くの自治体や施設で力を入れているのが、「栄養(食・口腔)」です。食事をしっかりとれる口腔環境を保つことは、十分な栄養を摂ることにつながるので、良好な健康状態の維持に欠かせません。実際に、医師や看護師だけでなく、歯科医師や管理栄養士など、高齢者を取りまく多くの関係者が積極的に口腔機能のフレイル予防に関わっています。現在では、さまざまな通いの場で、口腔機能におけるフレイル予防の啓発を定期的に行う自治体や施設も増えてきています。
自治体が実施する介護予防・自立支援に向けた「フレイル予防」の取り組み
さまざまな自治体がフレイル予防に取り組んでいます。なかでも兵庫県では、「フレイル予防・改善プログラム」を作成し、さまざまな関係職種と連携をとりながら口腔機能におけるフレイル予防を実施しています。このプログラムは「フレイル予防教室」と題し、サロンに通う高齢者それぞれの状態に合わせて以下の4つのプランを実施しています。
- はじめて編
管理栄養士や歯科衛生士などの専門職による健康教室と配食サービスを活用することにより、口腔機能の向上と栄養状態の改善をめざす。
- ちょこっと編
専門職を介さずに健康に関わる短い動画を見せることで、高齢者が自主的に学ぶ機会を提供する。
- しっかり編
管理栄養士や歯科衛生士などの専門職が口腔機能と栄養状態の評価をしながら、配食業者と連携して健康教育を継続的に行う。
- 個別相談編
自治体が事前に相談内容を把握し、管理栄養士や歯科衛生士、看護師や保健師、言語聴覚士などの専門職に個別に相談できるようにする。
いち早くフレイル予防に取り組むことが介護予防や自立支援につながる
フレイル対策は、これまで医療分野を中心に行われてきました。しかし、これからは介護と医療が一体となってフレイル予防を実施することが、介護予防や自立支援につながり、健康寿命の延伸に役立つことでしょう。すでに全国で、フレイル予防への取り組みを行っている施設が増えてきています。今後もフレイル予防への取り組みはますます広がっていくことでしょう。
参考: