介護人材育成
介護現場に「メンター制度」を導入して定着率をアップさせる方法とは?
介護スタッフの定着率を上げるためには、どのような方法が考えられるでしょうか? 離職の原因が、介護現場での人間関係や能力開発などにある場合、仕事の相談役(メンター)制度を作ることで、定着率だけでなくモチベーションのアップなども期待できます。今回は、定着率の向上が期待できるメンター制度についてご紹介します。
そもそもメンター制度とは?
メンター制度とは、経験を積み、業務知識を持った先輩社員(メンター)が、後輩社員(メンティ)に対して行う個別支援活動のことです。会社側が「仕事の悩みを相談できる先輩社員」を設定することによって、後輩社員の悩みや不安の解消を目指す制度です。
メンター 制度は、人材育成の一環として一般企業で広く利用されている制度であり、もちろん介護施設においても活用することができます。
メンターの導入効果
相談役であるメンターとの面談によりメンティの介護スタッフが抱える問題点が改善されれば、定着率が向上するだけでなく、キャリア形成・スキルの向上・人間関係の改善などが期待できます。
次に、メンター制度の導入によるメリットを詳しく見てみましょう。
制度を導入するメリット
- 新人や若手の介護スタッフの不安解消・軽減が期待できます
- 介護スタッフのストレス軽減につながります
- 介護スタッフのモチベーションやスキルが向上し、キャリア形成にもつながります
- 介護スタッフ間のコミュニケーションの活性化や人間関係の改善が期待できます
- 離職率の改善が期待できます
介護現場での事例
愛媛県の介護労働安定センターでは、「新人介護職員定着促進プロジェクト」が実施されています。このプロジェクトの一環として、各施設では次のような活動が行われました。
- 自身の取扱説明書(感情や考え方を書いたもの)を作り、自己認識に活かします。また、上司は各スタッフの取扱説明書を教育方針の参考にします。
- 成長カードを作り、目標設定や振り返りを行います。
このような取り組みを行った結果、各介護現場では「コミュニケーションが活発になり笑顔が増えた」「学習会への積極的な参加が増えた」といったプラスの変化が見られています。また、会話が増えたことにより「伝達速度が上がった」「消極的な意見が減った」という施設もありました。
メンター制度をうまく活用するには
メンター制度には職員の定着率やモチベーション向上などのメリットがありますが、導入したとしても必ず成功するわけではありません。まず、メンターとメンティに信頼関係が構築されなければ制度は成り立たないでしょう。さらに、メンターは通常業務と並行しながらメンティの指導を行うことになるため、当事者たちが面倒な業務と考えてしまう可能性があります。
そこで、メンター制度を職場に定着させるには、メンター役の介護スタッフに任せきりにするのではなく、施設全体でサポートする必要があります。経営層によるメッセージの発信・人事部から介護スタッフへの制度説明・研修の運営・上司の協力など、施設全体にわたる推進体制を作って制度を浸透させることが、制度導入の成功へつながります。
施設全体のサポートが成功への鍵
介護現場では利用者が優先されるため、介護スタッフ間でのコミュニケーションや新人・若手の介護スタッフの育成まで手が回らないことがあります。しかし、離職率が低くない場合には、それらが介護スタッフの退職理由なのかもしれません。定着率を上げるためには、積極的に面談の機会を作るなどして、介護スタッフの悩みや不安を解消することが大切です。ご紹介したメンター制度を導入するのもよいでしょう。
ただし、メンター制度を導入したとしても、メンターに業務を任せきりにするのではなく、施設全体でサポート態勢を整える必要があることは認識しておきましょう。
参考: